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半導体部品の外観検査をAIで自動化、常時稼働の製造ラインで8割超の省力効果─福島芝浦電子

ディープラーニングを活用して画像認識AIモデルを開発

2025年11月20日(木)日川 佳三、河原 潤(IT Leaders編集部)

芝浦電子のグループ会社である福島芝浦電子(FSD、本社:福島県本宮市)は、サーミスタ素子の外観検査をディープラーニングを活用して自動化に取り組んでいる。日本IBMの支援の下で画像認識AIモデルを開発して自動外観検査システムに実装。2024年10月に1号機、翌11月に2号機を稼働開始している。システムを導入した製造ラインは常時稼働し、83%以上の省力化を実現したという。2025年11月19日に日本IBMが発表した。

 福島県本宮市の福島芝浦電子(FSD)は、温度変化を検出する半導体部品であるサーミスタ(Thermistor)素子(写真1)の開発・製造会社である。サーミスタ素子メーカーとして世界トップシェアの芝浦電子(本社:埼玉県さいたま市)の専門拠点・工場として1985年に設立され、自動車、家電、産業機器などさまざまな電子機器の電子部品を製造している。

写真1:サーミスタ素子の先端写真。米粒よりも小さい楕円球体のサイズである(出典:福島芝浦電子、日本IBM)
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 福島芝浦電子におけるサーミスタ素子の生産規模は月間約4000万個。特に自動車では1台あたりのサーミスタ使用数が増加していることから、生産規模の拡大が続いている。

 同社は約20本のサーミスタ製造ラインを有し、1ラインあたり1日8時間で約4万本を製造。良品率99%以上を維持する中で、全製品に対して顕微鏡での目視検査を実施していたため、見逃しが許されない重大な不良や20種類近くに分類される不良モードへの対応に、高度な判断力と熟練した検査スキルが求められていた。

 「1本あたり1秒未満で判定を行う作業を8時間継続する検査員を常時20名以上配置する必要があり、人材の継続的な確保・育成の負荷や、欠員時における生産計画への影響といった、検査工程の運用における課題を抱えていた」(同社)という。

検査員の負荷を減らすべく、外観検査認識AIモデルを開発

 福島芝浦電子は、検査員に多大な業務負荷を強いるこれらの課題を解決すべく、外観検査を自動化する仕組みを検討。2021年1月から日本IBMの支援を得て、ディープラーニング(深層学習)を活用したサーミスタ外観検査認識モデルの開発に取り組んだ。

 日本IBMと共同開発した外観検査認識AIモデルは、従来の画像処理では対応が難しかったガラスの反射や形状の歪み、製品ごとの個体差といった要素に対しても、精度高く認識する。写真2は、実際に開発したAIモデルが判定した結果画像で、問題のない気泡と異物を正しく判別し検出している様子がわかる。こうして、人間の検査員と同等の判断精度での自動検査を可能にした。

写真2:実際に開発したAIモデルが判定した結果画像。問題のない気泡と異物を正しく判別し検出している様子がわかる(出典:福島芝浦電子、日本IBM)(出典:日本IBM)
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 福島芝浦電子は、外観検査認識モデルを実装した自動外観検査システム(写真3)を、実証実験、プロトタイプ開発、本番稼働テストを経て、2024年10月に稼働にこぎ着けた。翌11月には2号機の稼働が始まっている。

写真3:完成した自動外観検査システムの写真、現在は2ラインでAIが稼働している(出典:福島芝浦電子、日本IBM)
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●Next:1年間の稼働で得られた効果と、今後の計画

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