誰にとっても自明で誤解が生じない要求仕様を作成するにはどうすればいいのか。そこには王道と呼べるものはなく、エラーが生じる原因をしっかり理解し、適切な対策を講じるしかない。今回は前回に続き、ヒューマンエラーを引き起こす人間の特性を解説する。
前回から優れた要求仕様を作成するために不可欠の人間工学や認知心理学を解説している。このうち認知心理学の観点から見て、要求仕様の作成段階でのヒューマンエラーを引き起こす人間の特性は8つある。
「錯覚」、「偏見」、「誤解」、「感情による偏り」、「短期記憶量の限界と推論の曖昧性」、「機能的固着」、「同調」、そして「集団思考」だ。錯覚と偏見については前回解説した。今回は引き続き、残る6つの特性について述べる。エラーは身近なところで起きることを理解して欲しい。
誤解が生じる原因と誤解の分類
人間は、言葉や文章、人の行動など聴覚や視覚を通して入ってくる外部からの刺激によって、様々な情報を処理している。情報処理の形態には、大きく分けて2つのパターンがある。一つは概念駆動型処理とも呼ばれる「トップダウン処理」である。個人が既に持っている知識や概念に基づいて、入力された情報を処理するパターンである。
もう一つは、データ駆動型処理とも呼ばれる「ボトムアップ処理」だ。このパターンでは、入力された情報を基にして、その入力情報をより上位の概念に抽象化しながら情報を処理する。
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バックナンバー
- 要求仕様作成における最大のコツ─機能の2割をカットする:第14回(2009/11/02)
- システム仕様を数式に変換─Z言語で要求仕様を厳密に記述する:第13回(2009/10/02)
- 業務の粒度やアクターの役割を明確化し、システムのふるまいをUMLで表現する:第12回(2009/09/04)
- スケッチ、設計図、プログラミング言語UMLの利用法を再確認する:第11回(2009/08/06)
- ブレーンストーミング、KJ法、NM法、マインドマップ─発想法のエッセンスを理解する:第10回(2009/07/06)