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「集約・統合」が加速するIT基盤 仮想化、ブレード、ストレージの展望

2009年5月7日(木)インテック

情報システムを取り巻く環境が大きく変わりつつある。オープン化によってシステムの分散が加速したことで、運用管理は難しくなり、 リソースの〝ムダ遣い〟も目立つようになった。さらには、コンプライアンス強化のために、企業が保管すべきデータ量が増加している。 これらの課題を解決するために、最新のIT基盤をいかに活用したらよいか。仮想化とブレードサーバー、共有ストレージの最新動向や課題を検証する。
※本稿はインテック発行の「インテック テクニカルジャーナル Vol.8」(2008年6月発行)の記事に加筆・編集して掲載しています。

 1990年前後から、大型汎用機で行ってきたシステム構築を、小型コンピュータが取って代わるという分散化が進んできた。これは、ハードウェアとネットワークの進化によるところが大きい。ハードウェアにおいては、パソコンやUNIXワークステーションといった小型コンピュータの価格性能比が飛躍的に高まった。一方のネットワークについては、イーサネットやTCP/IPを用いた高速で安価な技術が普及してきた。

 しかし、最近はシステムの統合化・集中化の議論が盛んになっている(図1)。小型コンピュータを活用したシステムの分散化により、各種機能を実現するシステムが乱立し、システムの規模も肥大化した。これにより管理コストが増大し、情報セキュリティ上の問題も目立つようになってきたからである。

図1 システムの統合化・集約化の流れ
図1 システムの統合化・集約化の流れ(図をクリックで拡大)

 こうした状況を受けて、ソフトウェアメーカーは、サーバーの仮想化によって統合化・集約化の環境を整える方向で、製品機能の拡充を図っている。ハードウェアメーカーはブレードサーバーやストレージシステムなど、ハードウェアの物理的な集約を主眼とした製品ラインナップを強化している。

 これらの最新テクノロジは、企業がIT基盤に求める要件をどれだけ満たすものだろうか。以下では、仮想化、ブレードサーバー、ストレージシステムという3つのプラットフォーム技術の現状と展望を見ていく。

ネットワーク、ストレージ、サーバーで普及する仮想化

最初に仮想化について見ていこう。仮想化技術はサーバーだけでなく、ネットワークやストレージなど色々なプラットフォームにおいて浸透してきた。その技術的な位置づけを端的に説明すると、以下のようになる(図2)。

図2 仮想化技術の2つの位置づけ
図2 仮想化技術の2つの位置づけ

(1) 単一であるものを擬似的に複数に見せる技術

(2) 複数であるものを擬似的に単一に見せる技術

これら2つを組み合わせたケースも考えられるが、基本的には上記のどちらかの特徴を持っている。

仮想化技術そのものは決して新しい概念ではない。すでにさまざまな分野で当たり前のように利用されている。ネットワークの分野ではVLAN(Virtual LAN)や、VPN(Virtual Private Network)と呼ぶ仮想化技術が普及している。VLANは、物理的な接続形態から独立した論理的なネットワーク構成を実現するもの。上記のパターンで言うと、(1)に相当する仮想化技術だ。VPNは多数の人が利用するインターネット空間を1人が利用するプライベート空間として見せる仮想化技術で、上記の(2)に当たる。

ストレージ分野の代表的な例としては、ハードディスクのパーティショニングと、RAID(Redundant Arrays of Inexpensive Disks)がある。物理的に単一のディスクを、論理的に複数のパーティションに分けるパーティショニングは、(1)のパターンの仮想化技術だ。これに対して、複数のハードディスクを1台のディスクとして管理するRAIDは2のパターンである。大規模ストレージで用いられるLUN(Logical Unit Number)は、複数のハードディスクを集約したディスクグループから、一部を論理的なディスクとして切り出すもので、(1)と(2)を組み合わせた仮想化技術といえる。

サーバーの仮想化技術も幅広い。その1つがグリッドコンピューティングだ。複数のリソースを集約して単一システムとして稼動させるグリッドコンピューティングは、(2)のパターンのサーバー仮想化技術。一方、最近になって急速に活用が広がり始めているのは、単一の物理サーバー上で複数の仮想サーバーを稼動させる、(1)のパターンの仮想化技術である。本稿では、主に後者の仮想化技術について考察する。

サーバーの仮想化に注目が集まる3つの理由

実は、サーバーの仮想化技術は、とりわけ新しい技術というわけではない。メインフレームなどでは、1960年代から仮想化が使われている。IBM社のz/VMの起源とされる仮想化OS CP-67/CMS(1967年)はまさにメインフレーム時代におけるサーバー仮想化技術の代表である(文献[1])。

参考文献[1]
中島丈夫:特集「仮想化の正体」(4)Part4源流/TSSが発端、仮想マシンの40年、ITレポート、ITpro、(2005)、http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20051128/225236/?P=1&ST=system

1990年代後半以降には、商用かオープンソースを問わず、x86アーキテクチャ向けの仮想化ソフトウェアがいくつか存在するようになっていた。代表的な製品であるヴイエムウェアのVMwareもこの頃から世に出始めていた。だが、その目的は、1台のパソコン上でWindowsとLinux両方の環境を利用するといったケースが主で、サーバーの仮想化というより、デスクトップ環境の仮想化と言ったほうが適切かもしれない。

ここにきてx86サーバー向けの仮想化技術がブームになっている背景には、いくつかの理由がある。特に大きいのは以下の3つである。

(1) ハードウェア性能の飛躍的な向上

数年前までは、仮想化した環境で十分なパフォーマンスを確保できなかったため、サーバーの仮想化はそれほど注目されていなかった。しかし、近年はプロセサの高クロック化やマルチコア化が進み、1つのアプリケーション用途でリソースを使い切れないほどにまで、サーバーの性能が向上。複数のアプリケーションを、仮想化環境で安定して稼動させられるようになった。

(2) 運用管理ユーティリティ、付加機能などの充実

運用管理ユーティリティの成熟も、サーバー仮想化の動きを加速させる1つの大きな要因になっている。特にヴイエムウェアの「VMware Infrastructure 3(VI3)」は、運用性・柔軟性・操作性に優れているため、ユーザーからの評価も高い。VI3のように高機能な仮想化ソフトウェアは、IT基盤全体を支える統合ソリューションになりつつあるといっても過言ではない。無償の仮想化ソフトウェアも、運用性能を高める機能の強化が進んできた。「Xen」などは、VMwareと同等程度の運用性を確保しつつある。

(3) IT分野における環境保護意識の高まり

環境保護意識の高まりから、ITの世界で「グリーンIT」という言葉を耳にする機会が多くなった。これが、サーバーの仮想化が脚光を浴びるようになった3つ目の理由だ。ITの利用拡大に伴って急増する電力消費が、CO2排出量の観点から問題視されている。だが、仮想化によるシステム統合によって電力消費を低減できるといった環境保護効果が期待されている。

資源の有効利用から障害耐性の向上まで

サーバーの仮想化技術はまだ進化を続けている段階であり、未成熟なアーキテクチャという見方もある。それでも、現時点で得られるメリットは少なくない。キーワードは「システム統合」、「標準化された仮想ハードウェア環境」、「可搬性の確保」の3つだ。

(1) システム統合

これまでシステム拡張のたびにサーバーの台数は増加の一途をたどってきたが、サーバーを仮想化することでx86サーバーを集約・統合できるようになる。そして、プロセサやメモリーといったリソースの有効利用による初期導入コストの削減や、省電力化・省スペース化の実現、運用管理工数の削減などの効果が得られる。

(2) 標準化された仮想ハードウェア環境

ハードウェアの抽象化も仮想化によって得られる大きなメリットの1つである。メーカーや発売時期によってハードウェアの細かいスペックが違うため、機器の構成や設計に苦労している基盤担当者は多いのではないだろうか。多大な工数を費やして、ハードウェアとOS、アプリケーションの相性や互換性を検証してきたに違いない。しかし、仮想化技術を用いてハードウェアを抽象化し、ハードウェアレベルでの互換性を確保することで、基盤設計が単純化される。バージョンが古いOSのためにリプレースできるハードウェアがないケースにも、この効果は絶大である。ハードウェアの保守切れを心配しなくてもよくなる。

(3) 可搬性の確保

仮想化したサーバーは物理サーバー間を移行しやすい特徴がある。仮想環境上に構築した仮想サーバーは、仮想ハードウェア構成やBIOSの設定、OSやアプリケーションの実態が1つのイメージファイルとしてカプセル化される。そのため、もし物理サーバーに何らかの障害が発生したとしても、仮想サーバーを構成するイメージファイルを別の物理サーバーにコピーして迅速に復旧することが可能になる。この可搬性(ポータビリティ)は、バックアップや災害対策に有効なだけでなく、サーバー運用の柔軟性を広げる効果をもたらす。

仮想化ソフトウェアは、可搬性の特徴を生かすさまざまな付加機能を備えている。VMwareでは、仮想サーバーを停止せずに別の物理サーバーに移動する「VMotion」と呼ぶ機能がある。障害を検知して仮想サーバーを別の物理サーバーで再起動する機能「VMwareHA」も提供している。

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