[技術解説]

ストレージの今─仮想化でストレージの投資を最適化、内部処理の工夫で性能や拡張性を向上

進化するITプラットフォーム Part6

2009年6月17日(水)IT Leaders編集部

企業が取り扱うデータ量の爆発的増加に伴い、ストレージの機能向上に対する要請は厳しくなっている。こうした状況を受けて、リソースの効率活用や高速処理、利便性向上などをうたうストレージ製品が充実してきた。(編集部)

ストレージの階層化(1)
SSDとディスクを組み合わせる

ストレージ周りの技術進化は、仮想化だけではない。サーバーやネットワークの処理性能が高まり、処理するデータ量が多くなれば、必然的に処理性能の向上が求められる。

そこでここ数年、広がりつつあるのが「ストレージの階層化」である。階層の最上位に「SSD(半導体メモリーを使ったドライブ)」を置き、ディスクドライブと組み合わせて使うアプローチだ。SSDはHDDに比べ高速であり、消費電力も抑えられる。

「HP StorageWorks EVA」ではディスクアレイの一要素としてSSDを用意。SSDをtier0、ファイバチャネルのディスクをTier1、FATA(SATA)ディスクをtier2と階層化し、使い分けることを提唱する。「SSDはOSのブート部分やRDBSのメタデータ域に使うのが適する」(同社)。

日立やEMC、日本IBMなど他社も同様に、ハイエンド機の構成要素の一部として、SSDを提供している。「SSDによる高速化は、ストレージのストライピングによる高速化よりもシンプル。消費電力も圧倒的に低くなる」(EMCジャパン)。自社ではSSDを提供していないストレージ専業大手のネットアップは、デバイスの仮想化を使ってSSD「RamSanシリーズ」(システムクリエイトが販売)を使えるようにしている。

一方、階層化したストレージの下位層、つまりファイル管理用やバックアップ用途のストレージ(あるいは中小規模のストレージ)でも、高速化やコスト低減を指向した技術革新が続いている。1つが「重複排除」。文字通り重複しているファイルやデータを排除し、代わりに元データを指すポインタに置き換える技術だ。データ量を20分の1程度にできる(50分の1というベンダーもある)ため、効果は大きい。

同一のファイルだけを排除する手法と、ファイルやデータの一部まで立ち入って排除する手法がある。データ圧縮も、重複排除の手法の一部といえる。実は以前からある技術だが、元データが消えるとすべてのデータが消えるといった問題があった。それが解消され、最近になって採用が広がっている。

バックアップ用途では、VTL(仮想テープライブラリ)製品が増加中だ。急激に価格が低下したディスクをテープ代わりに使い、バックアップの時間短縮を可能にする(オンライン中に書き込めば、事実上ゼロにできる)。必要に応じて、あとでテープに移す使い方だ。

主要ストレージベンダーが専用機をラインアップするほか、既存のストレージを使うソフト製品(バックボーン・ソフトウエアの「NetVault VTL」など)や、ファルコンストア・ジャパンのようなバックアップソリューション専業ベンダーの製品など、選択肢は多い。

ストレージの階層化(2)
FCディスクの拡張性と性能強化

もちろん階層化の中核層であるファイバチャネルディスクでも、技術進化が続く。その1つがEMCの「EMC Symmetrix V-Max」。容量を数100ペタバイト規模に拡張でき、また数10万台規模の仮想サーバー接続できるアーキテクチャが最大の特徴だ。中核は「V-Maxエンジン」と呼ぶコントローラで、最大32個のXeon5500シリーズプロセサと最大1024ギガバイトのメモリーを搭載できる。これがストレージの仮想化や階層化、サーバーとのインタフェースの仮想化を担い、ストレージ配置の柔軟性や動的再配置、オンデマンドの割り当てなどを可能にする。

2006年に日本に進出した大規模ストレージベンダー、3PARの「InServストレージサーバ」も注目株の1つ。特徴は、物理ディスクを256Mバイト単位に分割し(チャンクレットと呼ぶ)、チャンクレットを組み合わせて論理的ボリュームを形成することだ。チャンクレットは基本的に別個の物理ディスクに配置されるので、I/Oを並列処理できる。一連の処理を専用LSIで処理することで、さらなる高速化を図っている。

このほかファイバチャネルではなく、LANに接続するNAS型のストレージでは、アイシロン・システムズがユニークな製品を提供している。どちらかと言えばビデオ映像や音声データ、解析データなどの非構造データの蓄積に向く大規模ストレージ「Isilon IQ」だ。

ブレードサーバーに比べ地味な存在のストレージだが、実際には進化の著しい非常にホットな領域である。

関連キーワード

ストレージ仮想化 / シンプロビジョニング / フラッシュストレージ / SSD / VTL

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