富士通は2009年12月、福島県伊達市にあるサーバー生産工場をプレス向けに公開した。サーバーやパソコンなどの生産拠点が中国や台湾といった海外へ移行する中、「メイドインジャパン」によるモノ作りにこだわり、品質維持と生産性の効率化に一丸となって取り組む姿勢をアピールした。
サーバー生産工場は、富士通のグループ会社である富士通アイソテックが運営する。国内向けに出荷するPCサーバー「PRIMERGY」シリーズを100%生産するほか、デスクトップPCの生産、プリンタの開発、生産、販売などを主な事業としている。
なかでもサーバーの生産台数増に注力。2008年度のサーバー生産台数は8万台/年(実績)、2009年度は12万台/年(計画)であり、「富士通としてワールドワイドで年間50万台の生産を目標にしている。そのうち20万台を生産したい」(富士通アイソテック 代表取締役社長 増田実夫氏)という。そのために同社はさらなる生産体制の強化を推進。2005年より「トヨタ生産方式」を導入して、徹底的な無駄の排除を実践するとともに、「1秒=1円、1平米=700円/月」というキャッチフレーズを掲げ、作業時間とスペースのロス削減を推し進める。
特に力を入れているのが、作業工程を見直すことでリードタイムの短縮を図ること。例えばこれまで、2つの作業工程それぞれの途中に共通する作業がある場合、その作業を一時的に1つに集約し、後工程では再び2つに分けていた。「一時的に工程を1つに集約するとモノがそこに貯まってしまう。次の工程にどれを先に流せばいいのか分からなくなり、工程が複雑化するほか、トラブルが発生した際の異常を検知しにくいという問題があった」。
そこで共通の工程があったとしても1つに集約せず、2つのまま作業工程を流してシンプル化することに努めた。「4日で28時間かかっていた作業工程のリードタイムを2日11時間まで短縮したプロセスもある」という。
二度手間による作業の重複も見直した。組み立てたサーバーは高温状態で正常に動作するのかを試験する。さらにOSのインストール作業も続けて行う。この際、試験とインストール作業でその都度、電源などのケーブル類を抜き差していたため効率が悪かった。そこでこの2つの作業を一本化。試験と並行してOSインストール作業をできるようにラインを改修し、重複していたケーブル類の抜き差し作業を1度きりにした。「作業時間の短縮はもちろん、インストールのラインを18メートル短縮できた」という。
こうした取り組みによる成果として、2004年から2008年でサーバーの生産能力は2.2倍に向上。作業手順を60%、在庫を35%削減した。「今後は1ラインあたりの生産台数を1日75台から2倍の150台を目指す」という。
生産台数増を目指す一方で、顧客満足度を高める取り組みも実施する。富士通は、サーバー納入後に顧客側で行うソフトのインストールや設定などを請け負うサービス「ITインフラデリバリーサービス」を実施している。これらの作業を行う場所をサーバー工場内に併設し、業務の効率化を図る。
「サーバーの製造ラインとITインフラデリバリーサービスの作業場所を隣接することで部品の梱包が不要になる。これまでは顧客先に納品する際も、部品単位で梱包していたため大量の梱包材が出ていた。機材を組み立てて納品することで梱包材を減らせられ、環境に配慮できる」という。「顧客先でSEがミドルウェアをインストールしたり、RAIDや運用管理ソフトを設定したりした場合、稼働するまでに2週間から1か月かかることもあった。ITインフラデリバリーサービスにより、納期を50%短縮できることもある」とメリットを強調した。