過去50社以上のM&Aを繰り広げてきた米オラクル。膨大な買収製品ポートフォリオを抱える同社が“新製品”と銘打って発表する製品は、買収先企業の製品をリブランドしたものや、その機能追加版であることも少なくなかった。そんな中、日本オラクルが2009年10月28日に発表したサプライチェーンの供給計画立案支援ソフトウェア「Oracle Rapid Planning」は、オラクルが3、4年かけて自社開発したという、正真正銘の新製品だ。「買収製品を自社製品のポートフォリオに付け加えるだけがオラクルの戦略ではない。Rapid Planningの発表は、M&Aだけでなく開発にも継続的に投資していることの1つの表れだ」(日本オラクル常務執行役員アプリケーション事業統括本部長の保々 雅代氏)。
Oracle Rapid Planningは、製造業の供給計画の迅速な変更を支援する製品。同社のサプライチェーンマネジメント(SCM)製品群の1製品という位置づけで、需要予測の「Oracle Demantra Demand Management」や、販売計画の「Oracle Demantra Real-Time Sales and Operations Planning」と連携して利用することを想定している。
インメモリーデータベースを利用した高速な分析エンジンを搭載する。例えば追加の発注内容を入力すると、納期や部材といった供給制約を勘案して新しい供給計画を自動的に再計算し、数分で結果を出力する。部品の供給元や生産計画の優先順位など、条件を変更した複数のシミュレーション結果について、事前設定したKPI(重要業績指標)ごとにグラフで比較できる。突発的に大量の発注が起こったり、製品設計の大幅な変更が頻発に起こる企業に適する。
同社のERP(統合業務)システム「E-Business Suite」や「JD Edwards EnterpriseOne」といった実行系システムとのデータ連携が容易だ。具体的にはEBSやJD Edwardsとデータモデルを共通化。Rapid Planningで策定した計画をデータ変換なしで実行系システムに転送できるようにした。データモデルは公開しているため、アダプタを作成することでSAPなど他社製ERPや、手組みのシステムなどともデータ連携が可能だ。今後はERPの「PeopleSoft Enterprise」や生産計画支援製品の「Oracle Production Scheduling」などともデータモデルの共通化を進める。
価格は最小構成で3000万円程度。日本語版は09年11月中旬に販売開始する予定。