[技術解説]

DaaSやVDI構築サービスが続々登場─主要クライアント仮想化製品の実力

実用期迎えたクライアント仮想化 Part6

2010年9月28日(火)鳥越 武史(IT Leaders編集部)

対応端末の多様化や復旧対応の充実が進み、VDI構築支援サービスも充実──。クライアント仮想化を実現するにはいくつかの方法がある。本パートでは、選択肢の増加や価格低下で動きが活発なDaaSに焦点を当て、注目ポイントや主要サービスの内容、自社でDaaS環境を整えるためのVDI構築支援サービスについて概観する。鳥越 武史(編集部)

国内で利用できるDaaSが続々と登場してきた(表6-1)。すでに提供・発表されているサービスの注目ポイントを整理すると、次の5つを挙げることができる。それは(1)OSライセンス、(2)信頼性の確保、(3)利用可能なプロトコル、(4)サーバーの契約形態、(5)自社DaaS構築ニーズへの対応だ。以下で具体的に見ていこう。

主要な仮想PC型DaaS一覧
表6-1 主要な仮想PC型DaaS一覧
※1 150ユーザーの場合 ※2 50デスクトップパックの場合 ※3 使用する物理サーバーによって異なる ※4「Economy」グレードの場合

VDI専用ライセンスが必要

OSライセンスはユーザー企業が用意する─これが、現在のDaaSの基本的なスタンスだ。インターネットイニシアティブの「IIJ GIO 仮想デスクトップサービス」やソフトバンクテレコムの「ホワイトクラウド デスクトップサービス」など、多くはOSを搭載しない仮想マシン、つまり“空のPC”に相当するものを提供するにとどまる。

仮想PCのOSライセンスは、ユーザー企業がマイクロソフトと個別に契約する。そのライセンスは通常のライセンスではなく、Windows Virtual Desktop Access(VDA)というものだ。月額料金は1ユーザーあたり1100円(参考価格)。通常のPC向けのWindows の保守サポート契約である「Software Assurance(SA)」や、企業向けの包括契約である「Enterprise Agreement」を契約している場合は、VDAのライセンス料金は無料となる。

例外として、VDAライセンス料金をサービスの月額料金に上乗せして分割支払い可能なDaaSもある。NTTコミュニケーションズは自社のDaaS「BizデスクトップPro」において、「マイクロソフトとOSライセンス提供に関する特別契約を締結している」(NTTコミュニケーションズの田村 尚子サーバーサービス推進部門担当課長)ことにより、こうした支払い方法を可能にしている。

サーバー技術を活用

PCはハードディスクの寿命で故障するし、熱暴走でハングアップすることもある。これに対し、DaaSはサーバー上で運用するシステムであるため、こうしたトラブルは起こりにくい。フェイルオーバーなどサーバー分野で培った技術で、障害対策を施している。

サーバーや仮想PCへのパッチや更新ファイルの適用は、当然ながら無停止でできる。例えば富士通のDaaS「ワークプレイス-LCMサービス 仮想デスクトップサービス」では、予備系に仮想PCを一時的に待避させる仕組みを設けることで、無停止でのパッチ適用を実現している。

それでも、サーバーやストレージといったハードウェアに障害が発生する可能性は完全に否定できない。そのため、各サービスではトラブル復旧の仕組みを用意している。一般的には、OSやアプリケーションはマスターイメージから、文書ファイルなどのユーザーデータは直前のバックアップから復旧を図る(図6-1)。

障害発生時の復旧の仕組み。システムの障害時は、予備系やマスターイメージを使って復旧する。
図6-1 障害発生時の復旧の仕組み。システムの障害時は、予備系やマスターイメージを使って復旧する。
ユーザーデータは直前のバックアップから復旧する(画像をクリックで拡大)

アプリケ—ションやOSのトラブル時に、エンドユーザー自ら仮想PCの再起動ができるセルフサービス機能を充実させる動きも活発だ。例えばホワイトクラウド デスクトップサービスでは、エンドユーザー向けに仮想PCの再起動を可能にするボタンを備えたWeb画面を用意。「エンドユーザーが仮想PCのトラブルごとにヘルプデスクに問い合わせる負担をなくせる」(立田 雅人クラウドサービス開発部 部長)。

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