対応端末の多様化や復旧対応の充実が進み、VDI構築支援サービスも充実──。クライアント仮想化を実現するにはいくつかの方法がある。本パートでは、選択肢の増加や価格低下で動きが活発なDaaSに焦点を当て、注目ポイントや主要サービスの内容、自社でDaaS環境を整えるためのVDI構築支援サービスについて概観する。鳥越 武史(編集部)
国内で利用できるDaaSが続々と登場してきた(表6-1)。すでに提供・発表されているサービスの注目ポイントを整理すると、次の5つを挙げることができる。それは(1)OSライセンス、(2)信頼性の確保、(3)利用可能なプロトコル、(4)サーバーの契約形態、(5)自社DaaS構築ニーズへの対応だ。以下で具体的に見ていこう。
VDI専用ライセンスが必要
OSライセンスはユーザー企業が用意する─これが、現在のDaaSの基本的なスタンスだ。インターネットイニシアティブの「IIJ GIO 仮想デスクトップサービス」やソフトバンクテレコムの「ホワイトクラウド デスクトップサービス」など、多くはOSを搭載しない仮想マシン、つまり“空のPC”に相当するものを提供するにとどまる。
仮想PCのOSライセンスは、ユーザー企業がマイクロソフトと個別に契約する。そのライセンスは通常のライセンスではなく、Windows Virtual Desktop Access(VDA)というものだ。月額料金は1ユーザーあたり1100円(参考価格)。通常のPC向けのWindows の保守サポート契約である「Software Assurance(SA)」や、企業向けの包括契約である「Enterprise Agreement」を契約している場合は、VDAのライセンス料金は無料となる。
例外として、VDAライセンス料金をサービスの月額料金に上乗せして分割支払い可能なDaaSもある。NTTコミュニケーションズは自社のDaaS「BizデスクトップPro」において、「マイクロソフトとOSライセンス提供に関する特別契約を締結している」(NTTコミュニケーションズの田村 尚子サーバーサービス推進部門担当課長)ことにより、こうした支払い方法を可能にしている。
サーバー技術を活用
PCはハードディスクの寿命で故障するし、熱暴走でハングアップすることもある。これに対し、DaaSはサーバー上で運用するシステムであるため、こうしたトラブルは起こりにくい。フェイルオーバーなどサーバー分野で培った技術で、障害対策を施している。
サーバーや仮想PCへのパッチや更新ファイルの適用は、当然ながら無停止でできる。例えば富士通のDaaS「ワークプレイス-LCMサービス 仮想デスクトップサービス」では、予備系に仮想PCを一時的に待避させる仕組みを設けることで、無停止でのパッチ適用を実現している。
それでも、サーバーやストレージといったハードウェアに障害が発生する可能性は完全に否定できない。そのため、各サービスではトラブル復旧の仕組みを用意している。一般的には、OSやアプリケーションはマスターイメージから、文書ファイルなどのユーザーデータは直前のバックアップから復旧を図る(図6-1)。
アプリケ—ションやOSのトラブル時に、エンドユーザー自ら仮想PCの再起動ができるセルフサービス機能を充実させる動きも活発だ。例えばホワイトクラウド デスクトップサービスでは、エンドユーザー向けに仮想PCの再起動を可能にするボタンを備えたWeb画面を用意。「エンドユーザーが仮想PCのトラブルごとにヘルプデスクに問い合わせる負担をなくせる」(立田 雅人クラウドサービス開発部 部長)。
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