パナソニック(本社:大阪府門真市)はデータ標準化の取り組みを始め、2011年4月の完成を目指して指針の作成を進めているという。同社の上席理事 情報システム担当である福井靖知氏が、ガートナージャパンのカンファレンス「Gartner Symposium/ITxpo 2010」(2010年10月25~27日)の初日の基調講演で明らかにした。併せてクラウドの活用や、パナソニック電工と三洋電機100%子会社化に伴うシステム統合についても語った。
意思決定スピード向上のため、同社が徹底的に力を入れるのがデータの標準化だという。「経営者が必要とする経営情報を見える化し、適切な判断を下すための経営情報を提供するには、データの標準化が不可欠。従来の情報システムの軸足は、生産性向上のためのプロセス革新・システム構築にあったが、これをデータの標準化や情報活用へと大きくシフトさせる」(福井氏)。
具体的には、経営判断に必要な情報の基になるデータについて、定義やコード体型、運用の標準化、データの精度向上といった取り組みを進める。「現状では、同じ意味なのに違う言葉になっていたり、同じ言葉で違う意味になっているデータがグローバルでたくさんある」(福井氏)。データ標準化の取り組みの指針となる「情報活用規程(仮称)」を現在策定しており、2011年4月に第一版の完成を目指しているという。
クラウド活用を推進、事業再編に伴うシステム統合に本腰
福井氏は、併せてパッケージやオープンソースソフト(OSS)、クラウドの活用も進めると強調。商品の世界同時販売や、コスト削減の方法論である「イタコナ」といった競争力を保持するための仕組みを支えるシステムは、徹底的にブラックボックス化して自社開発。そのほかのノンコアの業務は、パッケージやOSSを徹底的に活用していくという。クラウドについては、活用のガイドラインを作成。「プライベート/パブリッククラウドを使い分けながら、既にいくつかのプロセスで積極的に活用している」(福井氏)。併せて、こうした施策を責任を持って推進していくため、部門の組織構造改革を実施している最中だという。
同社は2011年4月に、パナソニック電工、三洋電機を100%完全子会社化。2012年1月をメドに、3社の事業をコンシューマ、ソリューション、デバイスの3つの事業分野に再編する予定だ。それに伴い、当然ながら情報システムの統合が急務になっている。「3社は情報システムの作りだけでなく、IT革新の考え方やレベルも違うのが現状。これらを1つにまとめていくことが、ITを経営に直結させる上で重要なポイントとなる」(福井氏)。
短期間かつ複雑な環境下で、業務を止めずにシステム統合を進めるという難題に挑むため、同社は3ステップで情報システムを統合するアプローチを採り、リスクを分散する。再編前、再編時、再編後の3ステップに分け、各IT基盤ごとに少しずつ構築を進める。例えば再編前は、3社の交流を活発化するため、3社でバラバラなコミュニケーション基盤の構築を優先。パナソニックのシステムに統一する。再編時は最小限の機能に絞ったシステムを整備。あるべき業務の姿をベースに、まずは各社の一番優れた仕組みに片寄せし、片寄せできないところは連携や併用といった対処で乗り切る。
「困難なことは誰の目にも明らかだが、システムの統合ができなければパナソニックに明日はこないという、強い意識で統合を進めていく」(福井氏)。