今、デスクトップの仮想化に注目が集まっている。ソリューションの進化によって、単なるPCの代替というレベルにとどまらず、業務効率向上やコスト削減、セキュリティ強化など様々なメリットが具現化してきているのだ。2010年10月13日に開催したIT Leadersセミナーでは、デスクトップ仮想化の最前線をベンダーやアナリストが講演、企業における活用について議論が交わされた。
リサーチ統括ディレクター/シニア・アナリスト
生熊清司氏
セミナー開催概要
- 日時 : 2010年10月13日(水) 13:00〜17:30
- 会場 : ベルサール九段(東京)
セミナー冒頭の基調講演では、アイ・ティ・アール 生熊清司氏が登壇し、同社のリサーチ結果を交えつつ、デスクトップ仮想化の現状と課題、動向などを解説した。
運用管理コスト削減など、企業におけるクライアント環境の課題を列挙し、IT部門はそれらへの対応が後回しになりがちと指摘。その上、2010年度の情報セキュリティ支出の増減傾向の調査結果を踏まえ、「強化すべき対策には、クライアントに関連する部分が多く含まれます」と付け足した。
さらに、ワークスタイルの変化やクライアントデバイスの多様化、パンデミックなど新たな課題を述べた後、それらの対応に有力なソリューションとしてデスクトップ仮想化を挙げ、イメージと種類を解説した。
そして、調査結果から見えるデスクトップ仮想化の現状を「デスクトップ仮想化をすでに導入している回答した企業のうち、狙っている導入効果の41.3%がセキュリティの向上、30.4%が運用管理コストの削減です」と説明。続けて、デスクトップ仮想化に対する懸念点に、導入コストの増加や管理者の知識・経験不足を挙げる企業が多い調査結果も紹介した。
その後、運用管理コストの削減やセキュリティの向上といったデスクトップ仮想化の利点およびその根拠を述べ、5年間のTCOシミュレーションの結果を提示。加えて、デスクトップ仮想化の市場は2009年度の4億円から2014年度には28億円と7倍に増えるという予測も取り上げた。
講演の最後に、セキュリティをはじめクライアントの課題を改めて列挙、「デスクトップ仮想化は、昨今のクライアント環境を取り巻く課題を解決するソリューションとして、十分検討に値します。企業のIT部門はその適用を検討すべき段階にきています」と結論づけた。
実際の導入経験をもとにコスト削減策などを紹介
セミナーの最後に、国分 沼倉氏とCスタジオ 千貫氏、ソフトバンクテレコム 諸岡氏によるパネルディスカッションが行われた。
まずはすでにデスクトップ仮想化を実践している各氏が自社の事例をそれぞれ紹介した。千貫氏と諸岡氏はともにワークスタイル変革を目的にデスクトップ仮想化を導入。一方、沼倉氏は事業継続性向上のために採用した衛星回線による業務アプリケーションの遅延を解消すべく、アプリケーション仮想化を行い、レスポンスを最大60倍に向上させた。
次に各氏は「テレビ会議のアプリケーションが使えない」(千貫氏)など、実際に導入・運用して見えた課題を話し合った。また、「ストレージのユーザー領域には安価なディスクを採用した」(諸岡氏)など、デスクトップ仮想化の導入・運用コストを抑えるための方策も解説された。
【IT Leadersセミナー誌上レポート】
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