[海外動向]

ユーザー企業が主導するDWHの進化、ビッグデータへの対応が次のテーマに

ペタバイト規模から知見を得る鍵はリアルタイム性とデータ品質の追求

2010年11月30日(火)田口 潤(IT Leaders編集部)

2010年10月下旬、IBM、Teradata、SAPの年次カンファレンスが立て続けに米国で開催された。企業が蓄積し得る膨大なデータ群から、競争力につながる知見をいかに速やかに得るか─。その解を追求するのが各カンファレンスに共通するテーマだ。

レポート2
2010 Teradata PARTNERS User Group Conference & Expo
2010年10月24日〜28日 米サンディエゴ/Teradata

米サンディエゴ・コンベンションセンター PARTNRESが開催された米サンディエゴ・コンベンションセンター。長大な建物だ

米国IT業界で今、クラウドコンピューティングと並ぶホットトピックが、「データウエアハウス(DWH)」およびそのアプライアンス製品だ。実際、米国の有力IT企業がこぞって、この分野に参入している。

昨年、米オラクルが「Exadata」を発表したのを皮切りに、米EMCはDWHソフト製品の米グリーンプラムを7月に買収。サーバーを米デルから調達して10月中旬にアプライアンス機、「DATA COMPUTING APPLIANCE」を発表した。

9月には米IBMがDWHアプライアンス専業ベンダーの米ネティーザを買収し、この市場に参入する意思を表明。SAPも同様だ。さらに米マイクロソフトと米HPも共同で、SQL Sreverを軸にしたアプライアンス機を開発中とされる。この分野の先駆者である米テラデータとネティーザくらいしかなかった2年前とは様変わりである。何が、米有力IT企業を駆り立てているのだろうか。

なぜ今、DWH製品なのか?

マシュー・ブース氏 PARTNERSの実行委員長を務めたマシュー・ブース氏(米AT&Tモビリティ セールスパフォーマンス&プランニング&分析担当ディレクター)
マイケル・コーラー社長兼CEO テラデータのマイケル・コーラー社長兼CEO。「No.1のDWHベンダーであり続ける、成果をユーザーに還元する」と語る

米テラデータのユーザーグループが10月24日〜28日に開催した年次カンファレンス、「PARTNERS」で答の一端が明らかになった。「増大する一方のデータを効果的に活用して、いかに経営に価値をもたらすか」、「様々なデータを武器に、どう競争優位につながる差異化を実現するか」。PARTNERSのユーザーセッションに共通するキーメッセージである。厳しさを増す経営環境の中で、欧米ユーザー企業は必死に次の戦略を追求しているのだ。

今回のPARTNERSの実行委員長を務めたマシュー・ブース氏(米AT&Tモビリティ セールスパフォーマンス&プランニング&分析担当ディレクター)は、基調講演の冒頭で「差異化、そして競争の武器になるのはデータだ。皆さんがそれをドライブする役割を担う」と強調した。“ゲストスピーカー”として基調講演に招かれたテラデータのマイケル・コーラー社長兼CEOも、こう応じる。「2010年上期は過去10年で最良の業績だった。前年同期比で売り上げは14%増え、新規顧客数も過去5年で最高を記録した。好業績を元に、皆さんに価値を提供するためR&D投資を20%増やし、コンサルタントも30%増やす」。

他のIT企業がこんな状況を黙ってみているわけがない。何よりも、テラデータの顧客企業数は「全世界でわずか1000社」(同)だが、「その売上高を合計すると10.4兆ドル」(同)に達する。大手IT企業にとって、効率のいい市場と言えるのだ。

「経営への価値提供」が主題に

実際、PARTNERSの様々なセッションや講演では、「経営や事業への価値提供」に主眼を置いたものが多かった。

一例が初日の「DWH/BIを通じた価値の創造」と題したセッション。米国の大手アウトドア用品専門店Cabelasや、全米第4位の電力会社Xcel Energy、建機のレンタル大手United RentalなどのBI責任者が、主に顧客情報分析にDWHを活用し、成果を上げていることを報告した。「新聞の折り込み広告のどこにどの商品を掲載するのかをモデル化して分析できるようにした。その結果、掲載商品の売り上げを3倍に増やした」(Cabelas)、「電力会社にとってコストがかかる業務は、検針と料金回収。検針に関してはセンサーを使って情報を集め、それを分析して料金を請求するモデルを作ることで、2009年だけで600万ドルの未収金を削減した」(Xcel Energy)、「レンタルしている機材の使用状況データを分析することで、機材の稼働率向上を実現した」(United Rental)といったものだ。

ほかにも米銀のWells Fargo、Walt Disney、3M、McDonald`s、Nationwide、eBay、Winn-dixie Stores(食品スーパー)、Amgen(バイオ医薬)、英Vodafoneなど、多彩な企業がDWH/BIの活用事例を発表した。日本からもKDDI、キュービタスの2社が参加、事例を発表している。

メインの講演会場。会場の広さは、この写真の6倍以上もある
メインの講演会場。会場の広さは、この写真の6倍以上もある

技術面では「Bigdata」に焦点

技術面で大きなテーマだったのが、「Bigdata」への対処だ。機器がはき出す各種のログ情報やWebサイトのアクセスログ情報、TwitterをはじめとするSNS上の情報や、スマートメータのようなセンサーなどから得られる情報、つまりペタバイト級の大規模データを指す。「技術の進歩に伴って、Bigdataを扱えるようになってきた。それをどう収集、分析、活用するかが重要だ」(テラデータのダリル・マクドナルド上級副社長)。

そのためのツールには、Hadoopを使う。9月にテラデータは、オープンソースのHadoopベンダーである米Clouderaと提携。BigdataをHadoopで解析し、テラデータによる分析と付き合わせる処理を可能にする計画だ。会期に合わせてHadoopアプリ開発ツールベンダーの米Karmasphereとの提携も発表した。

事例セッションでもHadoopの活用に言及したものがあった。その1社がeBay。世界最大のオークションサイトを運営する同社は、6PBもの大規模DWHを擁している。加えて「Singularity」と呼ぶ大量データを低コストで分析するシステム(Extreme Data Applianceというテラデータの製品がベース、容量は10PB以上)と、Webログ分析用のHadoop(5PB以上)も運用しているという。KDDIもその1社。アクセスログのデータをHadoop(2TB、実容量は1TB強)に格納し、顧客情報とログ情報を連動して分析する考えだ。

展示会はどうか。出展社はテラデータと提携するSASインスティチュートやマイクロストラテジー(BIツール)、インフォマティカやTalend(ETL/データ統合ツール)、SAP、インフォア(ERP)、トリリウムソフトウェア(データクレンジング)、Protegrity(データセキュリティ)など約40社。競合するオラクルやIBM、マイクロソフトも、例えばIBMはコグノスで協調関係にあるため、顔を見せていた。

時間軸で分析する機能を追加

テラデータは、PARTNERSに合わせて発表した最新版ソフト「Teradata Database 13.10」と、ハードウェア製品を展示した。最新版ソフトはマイナーバージョンアップだが、データの更新や追加期日を自動付与・管理し、時間軸での分析を容易にする「テンポラル」機能や、最大20倍までのデータ圧縮機能を追加しており、中身は濃い。

ハードウェア製品は、コアを6個持つXeon5600番台の採用が目玉。ハイエンド機である「Teradata Active Enterprise Data Warehouse 5650」の性能は43%高まったという。今年3月に発表した、フルSSDドライブ搭載(容量は17TB)のTeradata Extreme Performance Appliance 4600の出荷も、発表した。 (田口 潤)

最新製品を出展したテラデータのブースは、常時、人だかりがあった
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Teradata / DWH / Oracle / Exadata

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