[インタビュー]

混迷期抜けたSOA、これからが本番だ!─キーパーソン座談会

あらためてSOAに挑む!Part2

2010年12月7日(火)IT Leaders編集部

夢を語りすぎて混迷した反省から、対象を絞り、これから本番を迎える──。長年、SOAを実現する製品を提供してきたIT企業のエンジニアは、これまでの流れをどう考えているのか。 議論を通じて得られた結論は、「むしろこれからが本番」ということだ。司会:本誌編集長 田口 潤  写真:的野 弘路

高野 忍 氏
高野 忍氏
ソフトウェア・エー・ジー システムエンジニアリング マネージャー
大手製造業や通信会社に勤務し、多くのプロジェクトにマネージャーとして参画。2006年8月、ウェブメソッド(現ソフトウェア・エー・ジー)に 入社。ユーザー時代の経験を生かし、顧客視点からEAIやSOA、BPMの提案、実装を支援。現在、システムエンジニアリング部門を統括している

 

中村 秀樹 氏
中村秀樹氏
日本オラクル Fusion Middleware事業統括本部 ビジネス推進本部 パートナービジネス開発部 シニアマネージャー
BPMベンダーとEAIベンダーで勤務した後、2006年に日本オラクルに入社。SOAの概念を広く普及するアーキテクト部門を経て、現在はOracle FusionMiddleware のSOA/BPM領域に関する製品戦略を担当している

 

三好 啓太 氏
三好啓太氏
SAPジャパン ビジネスユーザ&プラットフォーム事業部 プラットフォーム営業部 シニアソリューションセールス
国内SIベンダーのシステム開発部門にて、企業システムの設計/開発などに従事した後、日本BEAシステムズのプリセールスとして日本のSOA先進事例に携わる。その後、SAPジャパンに入社。現在は、SAPのビジネス・プロセス・プラットフォームのセールス活動や事業開発を担当する

 

渡辺 隆 氏
渡辺 隆氏
日本アイ・ビー・エム ソフトウェア事業 SWブランド&チャネル・マーケティング WebSphereマーケティング・マネージャー
国内ベンダーでデータモデリングやOracle周辺ツールのマーケティングに従事した後、2000年より日本ラショナルソフトウェアのマーケティングを担当。UMLやRUP、構成管理の普及に務める。Rational社のIBMへの合併を経て、現在は、BPMやSOAのマーケティングを担当している

 

─ 2003年から2005年にかけて、SOAが現在のクラウド並みの関心を集めました。しかし、振り返ってみれば、あまり普及しなかった。その要因は、どんなことにあったと思いますか?

三好:色々な要因があると思いますが、当時、SOAを顧客に提案すると、「考えは素晴らしいが、肝心のサービスはどこにあるんですか?」と、必ず指摘されました。確かにレガシーシステムやクライアント/サーバー型システムなどが混在する環境では、サービス化しにくいものが多い。サービスを用意するためには既存システムに手を加える必要があり、これが普及を阻害する足かせの1つだったことは間違いないでしょう。

中村:結局、SOAという言葉が先行し、顧客に正しくSOAを理解してもらうことができなかったと思います。SOAについて説明した後、「で、どうしてSOAが必要なの?」と話がループすることもありましたしね。“サービス”という概念が難しかったのではないでしょうか。

渡辺:それに加えて、業務プロセスのモデリングや可視化などのBPM、ユーザーインタフェースのポータルを含め、当時はすべてをSOAで括っていた気がします。

─ 一言で言えば「夢を語りすぎた」と(笑)? 最近は、変わってきましたか?

渡辺:我々は、SOAとBPMを切り分けて説明するようにしています。SOAという言葉が指す範囲を、あえて狭くしているんです。

高野:実際問題として、SOAという言葉にとらわれるのは良くないと思いますよ。顧客の中には「当社もSOAに取り組みたい」と言うものの、聞くとSOAを正しく理解していないケースが少なくありません。そこで顧客からSOAという言葉が出てきたときには、「その言葉を使うのは止めましょうよ」と提案しています。

─ そこまで…。

渡辺:我々もSOAという言葉を全面に出さず、システムをつなぐという意味で「コネクティビティ」と表現します。「サービス指向アーキテクチャ」も、出しませんね。

三好:SAPでは一頃言っていた、エンタープライズSOAという言葉を使わず、「ビジネスプロセスプラットフォーム」と言ってます。

時代の流れと共にSOAの範囲が変化してきた

─ 以前と現在では、SOAという言葉の範囲が変わり、またこの言葉そのものを、強調しなくなったわけですね。どうりで「SOAは死んだ」という議論が出てくるわけです(笑)。しかし、「ある機能の固まりを標準的なインタフェースを持つサービスという形で実現し、それをリポジトリに登録。BPMの手法でサービス同士を連携させて、アプリケーションを構築する。実行時にサービス同士を疎結合で連携させる基盤としてESBを使う」という、SOAの考え方に意味がなくなったわけではないと思います。この点は、いかがでしょう?

渡辺:その概念こそがSOAの「リファレンスアーキテクチャ」であり、SOAの理想形です。それは今も変わっていません。

高野:私も同じ意見です。リファレンスアーキテクチャは、ユーザーインタフェース層やモニタリング層、ESB層やデータ層などで構成され、これはあるべき姿を示していると思います。ただ、このうちのどの層までをSOAとして括るのかが変化しているんです。

中村:サイロ化したシステムを、横断的に連携させようとした時、優先度が高いのはESBでしょう。理想は理想として、大括りなSOAを細分化する流れは必然と言えますね。

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