IT施策の成否を左右するCIOの存在。 一部の調査で先進諸国に比べると低水準なままだ。 IT部門の現状を示すデータから、IT人材確保の方向性を見ていく。
IT部門の貢献度
CIOの設置の有無で10ポイント以上の差
IT部門の人と組織の現状を知る上で最初に示しておきたいデータがある。CIO職を設けているか否かで、各種IT施策の実施にどれだけ差が出るかを示したアイ・ティ・アール(ITR)の調査結果だ(図2-1)。これによると取締役や執行役員としてCIOを設置している企業に比べ、不在の企業はIT施策の着手が明らかに遅くなる。
ここ数年多くのIT部門が経営に求められてきたコスト削減についてみると、CIO設置企業の6割超が2009年度までにベンダーとの契約を見直した。CIO不在企業では、その割合が5割に遠く及ばない。ITRの舘野真人シニア・アナリストは「コスト削減だけでなく、新しい技術やサービスを取り入れるスピードにも大きな差が出てくる」という。
この調査結果は経営に対するIT部門の貢献度と捉えることもできそうだ。もちろん、CIOの権限は企業ごとに差もあるので、CIOがいればIT部門の経営への貢献度が高まるという簡単な話ではない。だが、これだけ明確な差が出ている以上、CIOの設置は有効策の1つと言っていいだろう。
国内外のCIO
日本の設置率は10%未満
米韓との比較でも低水準
CIOの設置状況に関しては省庁や業界団体の統計が各種存在する。総務省の「平成22年度版 情報通信白書」では、役職としてCIOを設けている企業の割合は5.1%。日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)の「企業IT動向調査2010」だと7%となっている。「10%未満」というのが大よそ共通の数値である。
これを踏まえた上で、日米韓を比較した経済産業省の「『IT経営力指標』を用いた企業のIT利活用に関する現状調査」をみておく。母集団やCIOの定義の違いによるとみられるが、同調査によると「社内にCIOがいる」日本企業は58.3%なのに対し、米国は83.1%、韓国は71.3%(図2-2)。前述した「10%未満」から大きくかい離するが、日本企業のCIO設置状況は他国に比べても低い水準にあるとは言えるだろう。
「日本と世界のCIOとの間には、ITを投資と見るかコストと見るかという意識の差もある」。こう指摘するのはガートナー ジャパンの小西一有エグゼクティブ パートナーである。ガートナーの調べでは、海外のCIOは一貫してビジネスプロセスの改善を最重要ミッションと位置づけているが、日本のCIOが重視するのはコスト削減(図2-3)。この結果を小西氏は「日本のCIOはまだITを単なる機能として捉えている」と読み解く。
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