米ガートナー 日本では、ITが競争力を高めるためのツールだと認識されていない。単なるコスト削減の道具という視点を超えた次元でITを捉える必要がある─。
![米ガートナーのピーター・ソンダーガード シニアバイスプレジデント](/mwimgs/b/a/-/img_ba45c6d9e3647c2b2602049452833a8d12968.jpg)
ガートナー ジャパンは2011年10月3日〜5日、都内のホテルで年次イベント「Gartner Symposium/ITxpo 2011」を開催。そのオープニングで米ガートナーのピーター・ソンダーガード シニアバイスプレジデント(写真)は、意識改革の必要性を強く訴えた。
ガートナーの予測によると、企業向けと消費者向けを合わせた世界のIT市場は2011年に3.6%成長する。企業向けに限れば成長率は4.0%になるという。この数値は、国際通貨基金(IMF)が2011年9月に改定した2011年の世界経済全体の成長率見通しと同水準だ。
一方、2011年の国内IT市場は落ち込む。3月の震災後にガートナーが実施した調査では31%の日本企業が事業継続を目的としたIT投資を増やすとしたが、「他の部分を大幅に削減している」(ソンダーガード氏)ため、IT市場全体では1.8%のマイナスになる見通しである。震災の影響は大きいが、マイナス0.5%という2011年の日本経済全体の成長率見通しに比べると、国内IT市場の落ち込みは激しい。欧米の財政不安など「(日本だけでなく)世界が崖っぷちにいる」(同)ことを踏まえれば、国内企業はIT投資に対して委縮していると言えそうだ。
動向に注視したい技術
スマートフォン/タブレット端末の普及や、連携と融合が進むクラウドなどにより、企業ITのアーキテクチャは大きな転換期を迎えている(12ページの特集を参照)。技術の動向を注視して戦略的に活用していかなければ、「この先10年間、企業は大きな課題を抱えたまま競争に晒されることになる」(同)。そこでガートナーは「2012年の戦略的テクノロジ トップ10」と題し、今後の動向を注視したい技術を「人」「ビジネス」「IT部門」の3つの視点で10種類挙げた(表)。
![表 米ガートナーが発表した「2012年の戦略的テクノロジ トップ10」](/mwimgs/c/b/-/img_cb5664c826939db34322cd9b0e387e7a14964.png)
「人の視点」でアーキテクチャに影響を及ぼす技術の1つに挙げたのは、モバイル・タブレットである。タブレットの販売台数は2010年に世界で2000万台に過ぎなかったが、4年後には数十億台に達し、世界人口の7人に1人が所有するようになるという。「ビジネスの視点」では「情報こそ21世紀の原油だ」(同)として、情報から変化の兆候を読み取り事業展開に生かす次世代アナリティクスなどの重要性を強調した。
そして「IT部門の視点」では、クラウドやインメモリー技術を戦略的な技術にポジショニングした。特にクラウドに関しては「間もなく主流になる技術」(同)と位置付け、「コストを抑えながら新機能を獲得するために企業は“クラウドありき”のIT戦略を促進していくべきだ」(同)と主張した。 (栗原)