買収を加速させ、ビジネスプロセスマネジメント(BPM)分野で確固たる地位を築いた独ソフトウェア・エー・ジー。最近5年間で売上高を2倍以上に増やしてきた同社が「CeBIT 2012」の会場で明らかにした新事業戦略を報告する。(2012年3月6〜10日/ドイツ・ハノーバー/CeBIT 2012)
Velocity(頻度や速さ)、Variety(多様性)、Volume(容量)を制する企業が競争優位に立つ──。
独ソフトウェア・エー・ジー(AG)が打ち出した新たな事業戦略の根底には、そんなメッセージが見て取れる。同社は、ドイツ・ハノーバーで2012年3月6日に開幕した世界最大規模の情報通信技術の見本市「CeBIT 2012」の会場で新戦略を発表した。「インメモリー技術を駆使したビッグデータのマネジメント」が、それだ。カールハインツ・シュトライビッヒCEOは「複雑さを増すビジネス環境は(多くの企業にとって)チャンスでもある」と強調。チャンスをものにするには、インメモリーやビッグデータといった技術的な革新を取り込み、変化に素早く順応できるITプラットフォームを整えることが大切だという。
急成長
積極的なM&Aを通じて製品ポートフォリオ拡充
ソフトウェアAGは1969年設立の老舗ソフトベンダーである。その歴史は独SAPや米マイクロソフト、米オラクルより長く、メインフレーム黎明期から企業の基幹系システムを支えてきた。ウォルフラム・ヨーストCTOが「社名より製品ブランドのほうが広く知られているかもしれない」と話す通り、データベースソフト「Adabas」や第四世代言語「Natural」は、特に50代以上の読者には社名以上に浸透しているだろう。
ソフトウェアAGは近年、積極的なM&Aによって急速に製品ポートフォリオを拡充している。2007年に実施したSOA(サービス指向アーキテクチャ)基盤ソフトの米ウェブメソッドの買収や、2009年に手掛けたBPM(ビジネスプロセスマネジメント)製品の独IDSシェアの買収は日本国内でも話題を呼んだ。そのほかにもマスターデータマネジメント(MDM)製品の米データファンデーションや、モバイルアプリケーション開発ソフトの英メティズモの買収を通じて事業規模を拡大してきた。
売上高は2011年こそ前年比2%弱落ち込んだが、それまでは2007年の29%増や2010年の32%増など年間15%以上の成長を遂げている。特に、ウェブメソッドとIDSシェアを手に入れて強化したBPM関連製品の売上高は、2006年の約1億ユーロから2011年に約5億2800万ユーロに拡大。売上高全体の半分以上を稼ぎ出す主力事業に成長した。
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