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[特別対談]

【対談】「自社技術」に徹底してこだわりネットワーク機器で存在感示す

2012年10月1日(月)

パソコン通信の黎明期に高性能モデムを市場投入して以来、さまざまなネットワーク機器を提供してきたマイクロリサーチ。コンシューマに限らず、法人向けビジネスにも力を注ぐ。オリジナルブランド製品もOEM製品も堅調に推移している背景にあるのが、OSカーネルやプロトコルスタックを含め、すべて「自社開発」にこだわる技術力だという。主力事業の現状と展望を井澤誠副社長に聞いた。(文中敬称略)

今月のゲスト

井澤誠氏
井澤 誠 氏
株式会社マイクロリサーチ 取締役副社長
1982年、東海大学工学部卒業後、様々なネットワーク機器のハード/ソフト設計、システム設計業務に従事。マイクロ総合研究所では、自社ブランドのルーターなどの商品化を坦務。2008年、マイクロリサーチを設立、社長に就任。2012年、ストラテジックマーケティング担当として取締役副社長に就任し、現在に至る

インタビュアー

川上潤司
川上 潤司
IT Leaders副編集長
早稲田大学理工学部卒業。1989年、日経BP社に入社し、日経コンピュータ、日経情報ストラテジー、日経ベンチャーなどの編集記者・副編集長を歴任。2008年、インプレスグループに入社し「IT Leaders」創刊プロジェクトに参画。副編集長として現在に至る

川上: マイクロリサーチさんといえば、コンシューマ向けのちょっとマニアックなルーターなどを製造されている会社という印象があります。企業のIT部門の方々にとっては、もしかすると馴染みがないかもしれないので、まずはこれまでの沿革をご紹介いただけますか。

井澤: 前身のマイクロ総合研究所を設立したのは1987年のこと。神奈川県鎌倉市にあったシステムハウスの技術者がスピンアウトして作った会社です。

世の中にコンピュータネットワークという概念が登場してきた頃、10BASE-Tなどの規格が出てくる前からネットワーク技術に関わっていた面々が、ネットワークの市場に将来性を感じて会社を興しました。

まず手がけたのがモデムです。自社ブランドもしくはOEM(相手先ブランドによる生産)のモデムメーカーに徹することで、地歩を築いたのが最初10年です。モデムは単純な機構だと思われがちですが、例えば電気通信事業法に基づくリダイヤル規制など、日本独自の方式に対応するには相応のスキルが必要。また当然ながら、スピードなどの性能を高めるにも技術的バックグラウンドが不可欠です。当時、それができる1社が当社でした。

川上: 90年代の半ば以降、パソコン通信からインターネットへと時代が大きく変わりました。

井澤: 商用インターネット接続サービスが始まり、NTTさんがISDNに力を入れ始めるなどの動きを見て、TA(ターミナルアダプタ)やダイヤルアップルーターなどにラインナップを増やしていきました。ここでも例えば、23時〜翌日8時は利用時間に関わらず料金が定額になる「テレホーダイ」をうまく使う仕組みを実装したり、技術面で色々と工夫を凝らしました。

その後、ケーブルやADSL、光ファイバなど通信方式が多様化したり、個人の家庭でも常時接続が当たり前になったりと環境が進化する中で、当社としてもその時代に相応しいブロードバンドルーターなどを商品化。一方では、さらに多彩な付加価値を提供するネットワーク機器などにも手を広げ、今日に至ってます。

カーネルやプロトコルも
自社製だからできること

川上: ビジネス展開する上での「こだわり」を挙げるとしたら?

井澤: 当社はサプライヤーではなく、メーカーであり続けることを信念としています。言い換えると、技術で勝負していくということです。

それを象徴している1つに、我々の製品に搭載しているOSカーネルやプロトコルスタックはすべて自社で作りあげたもの。国内でIPルーターを手がけている会社はいくつもありますが、ラインナップすべてハードもソフトもすべて自社で設計しているのは、当社を含め、ほんの数社しかありません。中でも、とりわけ自社技術に強い自信とこだわりを持っているのが当社だという自負があります。

川上: その狙いは何なのでしょう。

井澤: 製品の付加価値を究めていくには、やはり技術力がものを言います。

例えば一定スペックのプロセサやメモリーを使うルーターを開発する場合、OSやプロトコルなどの処理がどう動いているか“中身の隅々”まで分かっていれば最適化はたやすい。結果、他社より高性能な製品を提供できます。

一方、OEM案件などで、ちょっと特殊な機能の要求があった場合でも、我々はキメ細かく対処できる。特定のトラフィックを監視したいとか、ある通信パスだけ別の処理したいとか…こうしたイレギュラーな話を持ち掛けられても、OS層からすべて自社開発しているから、そして高いスキルを持った技術者がいるから、柔軟に応えることができます。ここをコアコンピタンスにしたいのです。

川上: 実際に、そうしたカスタマイズ案件は増えているのですか。

井澤: 確実に増えていますし、さらに強化していきたい分野です。製品カテゴリという観点では目下、3つの柱があります。アナログモデム、ブロードバンドルーター、VPNなどのその他ネットワーク機器という構成ですが、それぞれで高付加価値型のカスタマイズ製品/OEM製品の裾野を広げていきたいと考えています。

川上: 今後の機能強化については、何か目標なりテーマは掲げていますか。

井澤: 1つには、BCP(事業継続計画)やDR(ディザスタリカバリ)を念頭においた強化を図っています。ルーターでWAN側の回線を複数持つことができるようにしたり、レイヤー2のVPN装置で回線冗長や機器冗長をを図れる仕様を取り入れたりといった施策はすでに打っています。

一方ではWi-Fiをもっと便利に使うための機能も必要だと考えています。今はセキュリティを重視してWEPキーを設定する使い方が一般的ですが、このあたりをもっと簡便かつ安全にする仕組みが強く求められるはずです。

いずれにせよ、ネットワークの世界にも仮想化が浸透してくるなど、技術はますます進化していきます。そんな時に、これまでのネットワーク機器の常識に縛られることなく、ユーザー視点で便利に、そして効率的にネットワークを使うための機能強化をこれからも続けていくつもりです。

エンタープライズに市場拡大
M2Mも主戦場の1つに

川上: ターゲットとする市場についてはいかがでしょう。

井澤: 当初はコンシューマの中でもハイレベルな層に受け入れられ、その後はSOHOや中小企業へと顧客を広げてきました。これからは、大企業のブランチオフィスなども含め、もっとエンタープライズよりに市場を広げていきたいと考えています。当社の技術力を評価してくれたOEM先、あるいはカスタマイズ製品の納入先となる企業が、ソリューションとして大企業に食い込むといったシナリオも考えられると思います。

新たな市場という観点ではM2M(Machine to Machine)にも多大な関心を寄せています。各種のセンサーだったり、街中の自動販売機だったり、さまざまな「モノ」に通信機能が実装され、そこで取得し得る情報を時々刻々ネットワークに送るような世界が幕開けようとしています。

M2Mをどのようにビジネスに生かすかは各社のアイデアによるところですが、そこには組込型のネットワーク機器が不可欠なはず。まさに我々が持つ技術力を生かせる領域であり、主戦場の1つとしたい市場です。高度で複雑、そして厳しい要求に鍛えられながら、もっともっと当社の存在感を高めていきたいと考えています。

問い合わせ先

株式会社マイクロリサーチ

〒140-0004 東京都品川区南品川2-2-5 清水品川ビル2F
TEL:03-3458-9021
FAX:03-3458-9020
http://www.MRL.co.jp/

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