[海外動向]

米国のあらゆるデータが集まる、オープンデータのポータルサイト「data.gov」とは?

公共データを単一サイトで公開、各国が追随

2013年3月11日(月)折川 忠弘(IT Leaders編集部)

散在しがちな公共データを集約し、単一の手法で検索/取得できるようにするデータポータルサイト。米国を筆頭に各国がデータを公開し始めた。そこにはどんなデータがあるのか、本当に有用なのか。米国の「data.gov」を中心に特徴を紹介する。折川 忠弘(編集部)

活用したいデータの所在が分からない、そもそも存在するのかどうかも分からない。公共データは、所管する各府省や政府機関ごとに散在しがちで見つけにくい。こうした課題を解決するため、組織の垣根を越えて一元的にデータを検索/取得できるポータルサイトを構築する動きが相次いでいる。米国と英国が先行し、それに欧州やアジア各国が続く。いずれも単一のサイト上にデータをリスト化し、形式の標準化、検索/取得方法の統一化を図っている。

カテゴリ別にデータを整理
サイト上で加工も可能

米国政府は2009年、政府機関や州、都市などが保有する公共データを一元的に管理/公開するサイト「data.gov」を開設。現在は各政府機関に加え、36の州と20都市が保有するデータをdata.gov経由で公開する。

金融や雇用、科学技術、交通、小売、通信、貿易、エネルギーなど46のカテゴリに分類してアップされているデータの総数(公称値)は約38万に及ぶ。形式は企業や市民が利用しやすいように、テキストベースのcsvやxml、地図や図形で標準的に使われるkmlやshpに限定している。データを利用する上での規約も明記。特段の事情がない限り、原則として商用目的であっても問題なく利用できる。

データはローデータ(加工済みの統計データも一部含む)と地図データに分かれる。ローデータには、出産や死亡、結婚、離婚などの人口統計、政府や地方の財政、農作物の収穫データなどの主要なものを一通り揃える。ブラウザ上でデータを開き、簡単な集計処理やグラフ描画、必要なデータを限定してのダウンロードを可能としているものも少なくない。

産業界で有効活用されているデータの代表例に「TSCA Inventory」がある。米国では人体に害を及ぼす可能性がある化学物質や混合物を有害物質規制法(TSCA)で厳格に規制している。最新の対象リストが常にアップデートされているTSCA Inventoryは、自社製品やその構成素材が規制の対象であるかどうかをチェックするのに役立つ。

40強の国がポータル開設
アプリ公開の動きも

米国だけではない。同様のポータルサイトは現在、41カ国が開設済みだ。EUやOECD、国連、世界銀行といった団体、パリやベルリン市などの自治体も、保有するデータの積極的な公開に動いている。

フランスが運用している「data.gouv.fr」は、公開データ総数の公称値は35万を超える。もっとも、データ数のカウント方法は一律には比較しにくい。人口統計を例にとれば年度単位を1つとするか、何年にもわたる推移をまとめて1つとするか、といった基準がそれぞれ違うからだ。

英国のサイト「data.gov.uk」は、データに加えて、住民や企業による活用を想定したアプリケーションも公開しているのが特徴的だ。地図と組み合わせてデータを可視化するものが目立つ。例えば、犯罪発生率の高いエリアを表示したり、主要道路の時間帯別の混雑状況を表示したりといったことを可能にするものだ。

これらのほかにもカナダやシンガポールなど、公開データの充実に向けてアクションを起こす国が続々と登場している。経済活性化や生活水準向上に向けた行政と、IT施策が深く絡む分野だけに、各ポータルサイトの動向に注目が集まる。

米国政府のデータポータルサイト「data.gov」

data.gov
  • URL:http://www.data.gov/
  • データ数:37万8529
  • データ形式:csv/xml/kml/shp
  • アプリ数:1264(政府公開)、236(市民が開発)、103(モバイル用)

(※2013年1月10日現在の数値)

位置情報を含む施設データなどの一部は地図を使って場所を確認できる。地図上に表示するデータを変更したり、座標情報をエクスポートしたりする機能を備える。なお、Google Mapsを地図として利用する場合、日本からアクセスすれば地名などは日本語表記となる
位置情報を含む施設データなどの一部は地図を使って場所を確認できる。地図上に表示するデータを変更したり、座標情報をエクスポートしたりする機能を備える。なお、Google Mapsを地図として利用する場合、日本からアクセスすれば地名などは日本語表記となる

data.govで取得できるデータ例。さまざまな分野で実に詳細なデータが公開されている

データ名 概要
Federal Data Center Consolidation Initiative (FDCCI) Data Center Closings 2010-2013 政府のデータセンター戦略(FDCCI)で公開するデータセンターの位置情報(約800カ所)。地図上に表示するデータもある
White House Visitor Records Requests ホワイトハウスを訪問した約350万人分の記録。入った時刻や直近に訪問した日時、氏名まで掲載する
FDIC Institution Directory (ID) -- Insured Insitution Download File 連邦預金保険公社(FDIC)に加盟する銀行リスト。 約2万7000行。財務情報や住所、支店数などを含む
Local Area Unemployment Statistics 月別の失業率情報。Web上で州、都市、都市内のエリアまで絞り、必要なデータだけダウンロードできる。毎月の失業者数も示す
Transit Injuries and Fatalities Summary by Agency - Time Series 2002年から2011年までの死亡事故や傷害、火災に関するデータ。発生した都市、場所、日付などの詳細情報を含む
National Operational Hydrologic Remote Sensing Center (NOHRSC) Snow Water Equivalents 雪に特化した気象情報。降雪量や積雪の深さ、気温、吹雪の状況などを地図とともに公開。農家などの事業者向け
USDA National Nutrient Database for Standard Reference, Release 22 米国農務省の食品別栄養データベース。 7500以上の品目のビタミンやミネラル、脂肪酸などの成分情報を揃える
U.S. Tomato Statistics 米国および州ごとのトマトの生産量、減反率、貿易量、用いる化学薬品、月別の価格などのデータ。野菜別にデータを公開する
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