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私の本棚『指輪物語』ほか、大成建設 柄登志彦氏が選ぶ3冊

2013年4月16日(火)IT Leaders編集部

小学生の頃の話。お袋が参観日にやってきたんだけど、教室に我が子の姿がない。それで先生が探し回ったら、図書室に独りこもっていたらしいんです。これは後になって聞かされたエピソードなのですが、本に夢中になると授業開始のベルさえも聞こえなくなる子供だったんでしょうね。三国志、ギリシャ神話、ラーマーヤナ…。当時、児童文学全集で読んだ作品は、今なお表紙の絵柄と共によく覚えています。

新版 指輪物語 〈1〉旅の仲間 上1新版 指輪物語 〈1〉旅の仲間 上1
J.R.R. トールキン 著、瀬田 貞二・田中 明子 訳
ISBN: 978-4566023628
評論社
735円

小学生の頃の話。お袋が参観日にやってきたんだけど、教室に我が子の姿がない。それで先生が探し回ったら、図書室に独りこもっていたらしいんです。これは後になって聞かされたエピソードなのですが、本に夢中になると授業開始のベルさえも聞こえなくなる子供だったんでしょうね。三国志、ギリシャ神話、ラーマーヤナ……。当時、児童文学全集で読んだ作品は、今なお表紙の絵柄と共によく覚えています。

これまで多くの本を読んできた中で強く心動かされた1冊を挙げるなら「指輪物語」でしょうか。今手元にある古い文庫本の奥付を見ると昭和54年となっているので、大学に入りたてのころに買ったんじゃないかな。この作品、2000年代になってから映画化されてヒットしたので、原書は読まなくとも、その壮大なストーリーをご存じの方も多いことでしょう。

ホビットや人間、魔法使いなど、幾多の種族が展開するドラマには色々な解釈があると思いますが、私は「どんな存在にも必ず意味がある」ってことを強く感じます。何度も読み返す中で、その度に新たな発見があるし、より深いメッセージを感じ取ることができる。本当に名作だと思います。3部作の中編では、これでもかってぐらいに絶望的な立場に追い詰められるんだけど、それでも頑張る、行動を起こすってところには学ぶことが多々ありますね。

話が横道に逸れるんですが、1988〜89年に米国サンフランシスコに短期留学する機会を得ました。その時、地元のフットボールチーム、49ERSがシンシナティ・ベンガルズとスーパーボウルで戦いました。最後の攻防、いつも通りのプレーができずに窮地に立たされます。それでもクォーターバックの選手は動じることなく仲間を信じて実直にパスを投げ続ける。残りわずかの時間の中で神がかりのようなパスを成功させ、見事な逆転勝利を手にしたんです。鳥肌が立つ試合展開は、指輪物語のテーマに通じるような所もあり、それ以来、フットボールの大ファンになってしまいました。

本の話に戻りましょう。ジャンルを問わず色々読む方ではありますが、記憶に残るのはSFモノが多いかもしれませんね。古いところでは、アイザック・アシモフの「銀河帝国の興亡」とか、ロバート・ハインラインの「宇宙の戦士」とか。後者の中に描かれる甲殻兵器は、ガンダムシリーズにも大きな影響を与えていることで知られています。日本の作家では小松左京さんなんかが好きですね。

比較的最近の作品の中でのおすすめはドイツの作家による「深海のYrr」。SFというと大宇宙を舞台とするイメージがありますが、こちらは深い海の中の出来事です。人間にとってまだ未知の領域を残す世界なので、そこでの環境問題を含め、読後には「もしかして実際にあり得るかも」なんて印象も残します。

ITの世界に身を置くと、テクノロジーとかビジネス方法論とかばかりに目が向きがち。自分の視野を狭めないためにも、小説等を通してこれからも見聞を広げていきたいと思っています。

宇宙の戦士
ロバート・A・ハインライン著、矢野徹訳
ISBN: 978-4150102302
早川書房
1029円

深海のYrr〈上〉
フランク・シェッツィング著、北川和代訳
ISBN: 978-4150411701
早川書房
840円

柄登志彦氏
柄 登志彦氏
大成建設 社長室情報企画部長 兼 大成情報システム 代表取締役社長
1980年、大成建設に土木技術者として入社。コンクリート構造を専門に設計・作業所・技術開発・研究の各部門を20年余り経験した後、情報企画部門に転身した。2008年から現職で大成建設グループのICT戦略を担当する。
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