[インタビュー]
進化し続けるテクノロジーの“本質”を見極めよう─17年間/210回に及ぶ「是正勧告」の著者に聞く
2026年6月19日(金)愛甲 峻(IT Leaders編集部)
情報システムやテクノロジーをめぐる違和感や気づきを基に、前向きな提言を示す本誌の人気連載「木内里美の是正勧告」が、2026年1月27日の第210回で最終回を迎えた。本誌の創刊時からITやデジタルの分野を中心に提言や気づきを発信してきた名物コラムである。著者の木内里美氏に、連載で訴えてきたテーマや、近年の企業ITを取り巻く状況の変化、テクノロジーの進展への向き合い方などを聞いた。
17年の連載を経て、変わったことと変わらないこと
──2008年11月から2026年1月27日の最終回まで、17年/210回にわたる長期連載、お疲れ様でした。企業のIT/デジタル活用に関して、ずっと是正勧告し続けていただいたわけですが、今日の状況をどう見ていますか。
木内里美氏(写真1):テクノロジーは日々進化していると思いますが、残念ながら根本的なことは変わっていませんね。生成AIという画期的なテクノロジーが登場し、多くの企業はその活用に向かっています。しかしJTC(Japanese Traditional Company)と揶揄されるような企業が、文化や体質が古いまま新しい技術を導入しても、抜本的な変化には至らないでしょう。
写真1:オラン 代表取締役社長の木内里美氏。大成建設 社長室 情報企画部 企画部長を歴任し、同社のCIOとしてIT施策を統括した。2008年より大成ロテック 監査役を務め、2012年にオランを設立して独立。オラン(Orang)」はインドネシア語やマレー語で「人」を意味する──相変わらず厳しいです(笑)。さて、過去回を振り返ると、2008年11月の第1回は「言葉の違いを意識せよ」でした。「IT=Information Technology(情報技術)」と「IS=Information System(情報システム)」は明確に異なることや、「基幹システム」という言葉が収益を生み出す事業のそれではなく、バックオフィス系のシステムを指すことが多い問題を指摘しました。2013年5月の「Bには気をつけよ!」では当時流行っていたBAやBI、Big Data、BPM、BPR、BRMSについて、「何となく良さそうだ」といった程度の理解で導入することを問題視しました。
流行りの言葉やイメージに惑わされると本質が見えなくなりますからね。「他社が導入しているから」といった理由も含めて、ITの導入を前提に考えてしまうと、自社の状況とミスマッチが生じたり期待した効果が出なかったりといったことが往々にして起こります。ですから意味や本質を深く考えず、技術やツール頼みになるような行動や文化、慣習などが是正勧告の対象でした。
一方、言葉そのものや言葉が指すテクノロジーや概念に、問題があるわけではありません。BA(ビジネスアナリシス)やBPM、BPRなどはいずれも有用ですし、真摯に取り組む価値もあると思います。問題があるとすれば、受け止める企業やITリーダー側の姿勢、本気度です。
これも変わっていないことの1つで、生成AIにもそういう面があるのは気になります。生成AIはビッグデータの活用や機械学習の進展を経て生まれた技術ですが、そうした背景はあまり意識されず、とても便利なので広く使われています。でも便利な道具として適当に利用すればそれでいいかというと違います。
そうではなく生成AIの本質や、生成AIで業務やシステムをどう変えていくかを突き詰める努力は必要でしょう。飛び交う言葉やテクノロジーはどんどん変わっていますが、企業や組織の技術への向き合い方はあまり変わっていないようです。
●Next:日本のCIOの先駆けが見る、今日のIT/デジタル活用
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