[ユーザー事例]

繁盛店「豚組食堂」に学ぶ、顧客への提供価値を高めるシステム化の勘所

「人が本来やるべきこと」から考えるサービスの再設計

2026年7月10日(金)柴崎 辰彦(Cercle Partners 代表/富士通 パブリックコンサルティング事業部)

深刻な人手不足と急激なコスト上昇に直面するサービス業や飲食業。デジタル化やDXは不可避だが、単なる省力化では顧客離れを引き起こす恐れがある。東京・六本木のとんかつ専門店「豚組食堂」は、顧客体験から逆算して人とデジタルの役割を再設計した。業務を「人/機械」「役務/もてなし」の4象限で分析。単なる効率化ではなく、店のこだわりを伝える手段としてモバイルオーダーを導入した。結果、現場には人ならではの価値を創出する時間が生まれ、負担軽減とサービス品質の維持を両立させている。

 多くの企業で人手不足が常態化し、コスト上昇が続いている。とりわけサービス業では、その影響が現場に直接表れ始めている。それでもサービス品質は落とせない。こうした状況の中で、従来のやり方を前提としたオペレーションは、少しずつ限界を迎えつつある。

 飲食業界では別の変化もある。急速に回復するインバウンド(訪日外国人旅行)需要の増加により、来店客の構成が大きく変わるケースだ。言語や文化、食習慣、前提知識の異なる顧客が店に訪れるようになり、現場で求められる対応は一段と複雑になっている。

 こうした変化を前に、飲食業のIT化に取り組むトレタ 代表取締役 CEOの中村仁氏は、オーナーを務める飲食店において「サービスとは何か」を改めて問い直した。「外食産業は超・人手不足とインフレにより大きな転換点に直面している。サービスの品質を維持、向上させるためには、現場の努力や人海戦術頼みではない、別の何かが必要だと考えた」(中村氏)

 そこで店のオペレーションを細かく分類し、人手不足の中でもサービス品質を維持できるようにした。実際に行ったのはモバイルオーダーの導入というシンプルにも見える施策だ。だがそこには、サービスサイエンスに裏打ちされた考えとアプローチがある。

●Next:体験価値を重視する人気とんかつ専門店が直面した環境変化

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