米IBMのWebSphere事業部門が「モバイル最優先」を訴えるカンファレンスを開催した。といっても、単にモバイルデバイスの活用を提唱したわけではない。モバイル時代の企業情報システムのアーキテクチャや、システムの構成要素をあの手この手で伝えようと意図していた点で意義深い内容だった。
デジタルフロントオフィスからグローバルに統合された事業へ
ウィック氏の話を受ける形で、オーストラリア第3位の健康保険会社、HCF(Hospitals Contribution Fund of Australia)の社長が登壇。保険の処理プロセスを刷新することで、従来は3週間要した処理が1日に、歯科の請求では治療時に支払い処理が完了するまでになった。市場シェアも以前の9%から12.5%に高まったという(写真12)。ツールにはIBMのBPM/ODMのほか、DWHのNetezza、分析ツール(Predictive Analytics)を組み合わせている。個人情報の保護や不正請求の検出・排除をする必要があるためだ。
基調講演の最後を務めたのは、IBMのスマータープラネット担当の副社長Adam Klaber氏。マラリアや結核の撲滅に向け資金提供するThe Global Fundという非営利組織における助成金管理システムなどいくつかの事例を紹介。さらに「モバイルによるWebへのアクセスは、従来型のネットのアクセスに比べ8倍速く進んでいる」などの数字を示し、その上で企業や組織の現在の取り組みを「デジタルフロントオフィス」、「グローバルに統合された事業」という2つのカテゴリに分類した。
デジタルフロントオフィスは、最も適切なメッセージを適切な時間、適切なチャネル、そして適切な場所に届けるようにすること。WesJetや文具販売大手のステープルズの取り組みがこのカテゴリになる。もう一つの「グローバルに統合された事業」は、フロント業務から記録業務までを一気通貫で完全に統合することを意味する。保険会社や銀行、製造業が目指すカテゴリだ。そして「どちらのカテゴリでも初日に述べた5つの原則が大事であり、今後、この2つのカテゴリはプロセスをスマートにする中で統合されていく」と、締めくくった。
最後にImpact2013で発表された主要な製品を表1に示す。多くはバージョンアップだが、100万件/秒のメッセージをニア・リアルタイムで処理・管理するアプライアンス「MessageSight」など、モバイル(IOT)時代に向けた新製品もリリースされた。
いかがだっただろうか。関連する製品を開発・販売するIBMのWebSphere事業部門が主催だけに、我田引水的な面は否めない。しかしモバイルファーストというトレンドがある以上、企業が自社の情報システムをモバイル対応させる必要があることは間違いないだろう。IBMの製品体系の分かりにくさや、事例発表が表層的過ぎるなど多少の不満はあるものの、多くの点で示唆に富む内容だった。