「ネットワークを含めてICTのインフラ全体を仮想化していく。つまり目指しているのはソフトウェアによって仮想化されたデータデンター、いわゆるソフトウェア・ディファインド・データセンター(SDDまたはSDDC)だ。この言葉はEMCが使っているので、そう言わないだけ」──。富士通は5月8日、ソフトウェア・ディファインド・ネットワーク(SDN)の考え方を取り入れたネットワーク・アーキテクチャと、それを構成する製品を発表。ネットワーク仮想化に本格参入することを表明した。
アーキテクチャの名称は、「FUJfTSU lntelligent Networking and Computing Architecture(FINCA)」。データセンター、広域ネットワーク、スマートデバイスという特性の異なる3つの要素を、最適に接続することを目指す(図1)。そのためにこれら物理要素を結ぶネットワークをSDNの考え方に基づき、仮想化する(仮想インフラ層)。これを「分散サービス基盤層」で管理/制御することで、QoS(品質)の維持はもちろん、「大規模災害発生時に動的にネットワークを切り替えるなど、インテリジェントなネットワークを形成する」(富士通)。
当然、FINCAは今すぐに実現する話ではなく、中期的な方向性を示すものだ。まずはデータセンター向けの製品をリリースし、2013年後半に広域ネットワーク向け、2014年にはスマートデバイス向けの製品を投入する計画である。
FINCA実現に向けた具体的な製品として、コンピュータセンターやデータセンターのネットワークを仮想化する「コンパージド・フアプリツク・スイッチ」と、ネットワーク機器を仮想アプライアンスとして提供するIPCOM VXシリーズ」の2製品を発表した。
コンパージド・フアプリツク・スイッチは、いわゆる仮想スイッチの1種。
結線は導入時のみで済み、後はソフトウェアによる設定でネットワークを変更できる(図2)。例えば、仮想サーバー移動時にネットワーク設定を自動変更できる。業務ごとに専用の仮想ネットワークを提供するマルチテナント対応、40Gビットイーサネット対応で性能面でのボトルネックをほぼなくした、などが特徴。ラックマウントのサーバーやストレージ向けのTop of Rack型と、PRIMERGYに内蔵するスイッチブレード型の2タイプを用意した。
IPCOM VXは、ファイアウォールやロードバランサなどの機能を提供する(図3)。最大50程度のファイアウォールを稼働できるので、マルチテナントのネットワークにおけるセキュリティを、1台で提供できる。複数の仮想アプライアンス動作時の性能劣化を最小化するハードウェアによるI/O仮想化の仕組みを搭載したという。