米マスターカード(Mastercard)の日本オフィスは2013年8月20日、日本市場におけるビジネス戦略説明会を開催し、決済にかかわる「テクノロジ企業」であることを強調した。具体例として、海外で先行しているNFC(近距離無線通信)機能を使った非接触決済を日本市場でも本格展開することを挙げる。併せて、非接触決済機能を持つ電子ウォレット(財布)を企業が自社ブランドで展開するためのシステムを、米本社と米C-SAM、および大日本印刷の3社で日本企業に提供することを発表した。
「デジタル化されたデバイスのすべてが、EC(電子商取引)のデバイスになる。マスターカードは、テクノロジで、より安全で簡単な決済手段を提供し、個人や社会、コミュニティといった社会を豊かにしていく」――。説明会に登壇したロバート・ルートン日本地区社長は、こう強調した。
ここでいうデジタル・デバイスは、スマートフォンやタブレット端末はもとより、同様の機能を持ちネットワークにつながる家電や装置類を指している。各種のデバイスを使っている、その時々に、必要なモノを購入したり、そのデバイスの機能を高めたり変更したりするアプリケーションを購入したりといった利用場面を想定している。
テクノロジ企業を強調する背景には、米アップルや米グーグルといった企業が独自のオンラインストアを立ち上げると同時に決済処理にも乗り出していることがある。マーケット・デベロップメント部門担当上席副社長の広瀬薫氏は、「彼らとの競争が始まっているが、マスターカードには長年の経験と技術がある。研究所では、アップルやグーグルがどう仕掛けてくるかを予測しながら次の手を考えている」と明かす。
他流試合を含めた競争激化の中で、マスターカードが本格展開しようとしているのが「MastePass」。決済カードだけでなく、モバイル端末やPCなどからの決済を可能にする仕組みだ。中でも、NFC(近距離無線通信)機能を使った決済サービスの「PayPass」の普及に本腰を入れる。
PayPassは、国際標準のISO14443 TypeA/Bに対応した決済サービス。クレジットカードに搭載しての提供だけでなく、スマートフォンや腕時計などに組み込んだ形での利用も可能になっている。海外では2004年から提供を始めており、2013年第2四半期時点では全世界の56カ国約120万店舗で利用可能になっている。
これまでは、日本市場ではNTTドコモの「おサイフケイタイ」や「Suica」に代表されるFelica規格に沿った電子マネーが先行してきた。そのため、PayPassの本格展開時期を見計らっていた。しかし、ここに来て、条件がそろってきたことから日本市場での展開にアクセルを踏むことにしたという。
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