新時代のオンライン講義プラットフォーム「MOOC(Massive Open Online Course」の存在は知っているが、まだ体験したことがないという読者も少なくないだろう。そんな読者の背中を、編集部から押させていただくのが「ITリーダーに贈るMOOCガイド」の趣旨だ。今回は、3大MOOCプラットフォームの1つである「edX」の概要と必聴のオススメ講義を紹介しよう。 (1)Udacity編|(2)Coursera編
edX―世界各国の大学が集まるアカデミア発のMOOC
[MOOC Platform Profile]edX www.edx.org/ ●開設時期:2012年5月 ●設立者・運営組織:米ハーバード大学、マサチューセッツ工科大学 ●主な参加大学:米カリフォルニア大学バークレー校、カリフォルニア工科大学、ジョージタウン大学など |
既存の大学によるMOOC活用の試み
UdacityとCourseraはいずれもベンチャー色が濃く、ITやインターネットを利用して、いかにして高等教育を変革できるかというアプローチに立ったMOOCである。一方、ハーバード大学とマサチューセッツ工科大学(MIT)が発起人となって2012年5月に立ち上げた「edX(エデックス)」は、既存の大学がMOOCという仕組みをどのように活用できるかを探るための取り組みととらえられる。
そうしたアカデミア寄りの性格もあってか、edXには現時点ですでに29校の有力大学の参加をとりつけている。上述の2校、カリフォルニア大学(UC)バークレー校、カリフォルニア工科大学、ジョージタウン大学、コーネル大学といった米国の各校に加え、京都大学、北京の清華大学、インド工科大学ボンベイ校などの校名も参加校リストに並ぶ。2013年9月には、edXとグーグルが提携し「OpenEdX」というオープンソースのMOOCプラットフォームを共同開発するという発表があり、一部で注目を集めた。このOpenEdXは2014年前半より「mooc.org」サイトから配信される予定だ。また、2013 年10月9日にはハーバード・ビジネススクール(HBS)も「HBX」というMOOCの投入を準備しているとの報が入ってきた。プラットフォームにはやはりedXが採用される予定だ(※1)。
edXでは現在までに合わせて72の講座が提供されており、ジャンルについてもIT系を含む自然科学から、人文、社会科学まで多岐にわたる。また、『これから「正義」の話をしよう』などの著作を持つ、政治哲学者・倫理学者でハーバード大学教授のマイケル・サンデル(Michael J. Sandel)氏の「Justice」、X線宇宙物理学の第一人者でMIT教授のウォルター・ルーウィン(Walter H.G. Lewin)氏らの「Classical Mechanics」など、日本でもおなじみの名物教授による講義も提供されている(動画)。
edXの概要説明ムービーを見ると、「世界一流の講義を、簡単に、しかも楽しみながら受講できる」ことが特徴として打ち出されている(動画)。具体的には、講義の内容についての理解度を確認する択一形式のクイズ(instant feedback)や他の受講者らとQ&Aが可能な掲示板などの仕組みが実装されているようだ。これはオンラインでの独学に伴う難しさを低減するための仕組みと言えようか。また、YouTubeのedXチャネル(EdXOnline)には、プラットフォーム全体の紹介や各コースの概要について説明したたくさんの動画が公開されている。
edXの概要を伝える「How it Works」。edXでは、オンラインでの独学にありがちな難しさを解消するためのさまざまな工夫がなされている