日本市場では高評価なのに世界市場には通用しない製品やサービスを「ガラパゴス」と呼ぶ風潮が定着して久しい。日本の常識と世界の常識に大きなギャップが生まれている。同様のことは、企業のIT戦略や情報システムでは起こっていないとは断言できないのではないだろうか。こうした観点から、2020年を見据えた「グローバル企業のIT戦略」を、今回から何回かに分けて見ていく。第1回はクラウド市場(マーケット)を取り上げる。
クラウドサービスの事業形態は欧米では既に、クラウドプロバイダー、クラウドブローカー、クラウドアグリゲーターの3つに分かれている(図1)。日本では、クラウドプロバイダーには2013年10月時点で約50社が参入しているが、クラウドブローカー、クラウドアグリゲーターはあまり目立たない。
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一方、アジアでは既に、インドのBSNL、インドネシアのIndosat、香港のHGCといった各国を代表する通信事業者が、クラウドブローカ事業を開始している。弊社が提供するサービス基盤を使って、「ホワイトラベル」でクラウドサービスを展開する。ホワイトラベルとは、他社が提供するサービスを、それぞれのブランドで提供する形態である。
クラウドアグリゲータは、これまでにない付加価値を付けたクラウドサービスを提供する。ITベンダーは、この領域に自ら参入するか、参入したい企業を支援する役割を担うことになるだろう。ユーザー企業にすれば、IT製品をITベンダーから買う時代は終わり、クラウドサービス・ブローカから借りる時代が近づいていることを認識すべきである。さらには、ユーザー企業自らが、クラウドサービス・ブローカ市場に参入していくのも悪くない選択だ。
ITアウトソーシングはクラウドにシフト
ところで、クラウドが台頭してくる前の2000年前後、日本ではアウトソーシング・ビジネスが流行していた。「所有から利用へ」という流れでは、クラウドと同じと見る向きもあるかもしれない。当時、どの業界の、どの企業もこぞってITベンダーが提供するアウトソーシングモデルを採用した。
ただ、その波に敢えて乗らなかった企業がある。各業界のNo.1企業だ。彼らは、フルスコープのアウトソーシングを避ける傾向が強かった。
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