スーパーマーケットやホームセンターなどの事業を多角的に展開するバロー(本社:岐阜県多治見市)。商機を確実につかむために同社が力を注ぐのが、店舗の様々な業務を支えるためのシステムだ。目下の取り組みや今後の方向性について、システム部次長の畑中豊氏が語った。オープンストリームが開催した「Biz/Browser Re:Style Day 2013」のゲストセッションの内容を紹介する。
端末が変われどシステムを使い続けることが絶対条件
バローは、東海地方を中軸に小売業を手がける東証一部上場企業だ。中核となるスーパーマーケットは219店舗。そのほか、35のホームセンター、17のペットショップなどを展開し、連結ベースの売上高は約4300億円に達する。
顧客が欲する商品の品揃えを充実させ、欠品などによる商機ロスを限りなく少なくする─。小売業にとっての基本となる業務を支えるため、同社はこれまで「店舗システム」と呼ぶシステムを構築・運用してきた。
最初に本格的に構築したのは1997年のこと。本部にメインフレームを導入する一方、店舗にはクライアント/サーバー(C/S)型のシステムとハンディターミナル(HT)としてカシオ計算機のDT-900を導入するという構成だった。商品の発注業務を例にとると、在庫わずかとなった商品のバーコードを従業員がHTでスキャンし、それをバックヤードに持ち込んでC/Sシステムにアップロード。それがバッチで本部のメインフレームに送られるというものだった。
第一世代のシステムは、その後の店舗数の増大や、販売力アップに向けた機能追加といった課題に十分に応えるのが難しくなり、やがて刷新することを決断。「発注、商品移動、在庫報告、返品、廃棄、棚卸、単品の在庫照会といった店頭で必要となる業務すべてをHTで対処できるようにすることを目標に据えました」(同社システム部の畑中豊次長)。
写真1:バロー システム部 次長の畑中豊氏
それまでの経験から、新システムに実装すべき要件として、ざっと以下のようなものが挙がった。
- Wi-Fiを活用し、在庫照会などのシーンで顧客に背を向けることなくその場で対処できるようにすること
- 商品発注をかけようとした時、もし僅かの時間差で他の従業員が発注を済ませていたとしたら、その情報が把握できること
- 各種マスターデータの端末へのダウンロードを必要とせず、使用時のアプリケーションの動作もキビキビしていること
- 正式発注などを待たずして取引先が各種データを随時参照して、生産や包材の前段取りをできるようにすること
- HTの機種を頻繁に変更しても、アプリケーションは大きな影響を受けずに継続使用できること
- HTのプログラムモジュールの更新があった際に、ユーザーに手間をかけずに自動アップロードを図れること
- 冷蔵庫/冷凍庫などシールドされた環境下でもオフラインで動作し、通信確立後にデータを自動伝送できること
リアルタイム性の追求や、機種依存からの脱却などをテーマにシステム部は喧々諤々と議論を重ね、新システムの大枠を固めていった。本部にも店舗にもオープン系のインフラを整備し、そこでJavaをメインとして開発するアプリケーション(ロジック)を動かすというのが基本構想だ。
最後まで悩んだのがHTまわりのシステム環境をどうするかということだった。「読んで字のごとく、小売業は“小さく売って儲ける”商売なので、HTの機種選定にしても常にコストセンシティブである必要があります。寿命等で買い換えるタイミングがきたら、その時に最もコストパフォーマンスがよいものを選ぶ。だからこそ、機種が変わってもシステムが使い続けられることが絶対条件なのです」(畑中氏)。
その点ではWebシステムが理にかなうわけだが、オフラインでの処理や、パフォーマンスの維持といった観点で課題が残る。何かブレークスルーがないものかと情報を収集する中で見つけたのが、アクシスソフト(後にオープンストリームと合併)のRIA(リッチインターネットアプリケーション)開発実行環境「Biz/Browser」だった。
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