Webアプリケーションのリッチインタフェース化が進む昨今、次世代の標準プラットフォームとして注目されているのがHTML5である。HTML5の台頭によって、企業ITはどのように変わるのか。また、Webアプリケーション開発にあたるITエンジニアやWebデザイナーには、今後どんな能力やスキルが求められるのか―。「HTML5プロフェッショナル認定試験」を展開するLPI-Japanの2人のキーマンが、次代をリードする人材像を解き明かした(聞き手はIT Leades編集長・川上潤司 文中敬称略)。
次世代のITサービスを担うプロフェッショナル人材を育成
―その一方、グローバルにおけるHTML5に対する理解度、関心度の高まりに比べると、まだまだ日本では立ち上がりが遅いような気もしているのですが。
成井:確かに米国企業の間では、「HTML5をいかに駆使し、WPO(Web Performance Optimization:Webパフォーマンス最適化)を実現するか」といった議論が活発に行われているのに対し、日本はそこまで成熟したレベルには達していません。
鈴木:日本のIT企業は、カスタマー個別対応のSIビジネスを中心に発展してきた経緯があり、意識改革が遅れている面があるのかもしれません。ただ、今後グローバル市場の何千万人、何億人といったユーザーを相手にサービスを提供していかなければならないことを考えた時、もっと上流の部分で競争力を高め、ビジネススピードを上げていくことの重要性は、十分に理解していると思います。
―企業だけでなく、個々のITエンジニアレベルでもそうした時代を見据えたスキルを身に付けていかないと、キャリアアップを図ることはできません。そうした中での“道標”として「HTML5プロフェッショナル認定試験」があると理解しています。高い問題意識を持ったITエンジニアは、どんな動きを始めているのでしょうか。
鈴木:先ほど日本の動きは遅れているという話もありましたが、HTML5プロフェッショナル認定試験に関してはまったくの例外で、受け付けを開始するはるか以前から注目度が高く、大量の予約が入っていました。これは他の認定試験と比べても、驚くべき立ち上がり方です。
成井:様々なメディアにも取り上げられるようになり、「今一番取りたい資格は何か」というアンケート調査において、HTML5プロフェッショナル認定試験が一番になったこともあります。それくらい注目度が高まっているのは事実です。
―HTML5プロフェッショナル認定試験では、実際にどんな能力が問われるのですか。
成井:認定制度を通じて我々が実現したいと考えたことは、先にお話ししたITとクリエイティブが融合する世界、言葉を変えれば「WebプログラミングとWebデザインの融合」にあります。これまで分断されていた双方の専門家が歩み寄って能力を発揮することで、新しい時代のWebアプリケーション開発が可能となるのです。
鈴木:したがって我々は、HTML5プロフェッショナル認定試験を単なるスキルの追認制度だとは考えていません。どういった職種の人材が、どんな目的を持ち、どんなシチュエーションでWebアプリケーション開発に臨むのか、ジョブ/タスク分析をしっかり行った上で試験問題を作成しています。プログラマーやデザイナーなど、様々な役割に応じてどれくらいのレベルの知識やスキルを備えれば、共通認識を持ってWebアプリケーション開発にあたれるのかを計ることに重きをおき、バランスのとれた認定試験にすることを目指しています(注:図1を参照)。
図1 HTML5プロフェッショナル認定試験が対象とする範囲
―試験そのもののハードルは、決して高いものではないということでしょうか。
鈴木:必ずしも満点を目指す性質の試験ではないという意味では、そう言えるかもしれません。ただし、非常に広範囲の内容が問われるので、勉強は大変かもしれません。HTML5のことだけを知っていてもだめで、目的とするWebサイトや、Webアプリケーションを実際に作れなければ意味がないからです。今年度中の試験開始に向けて、現在「レベル2」の資格体系や出題構成を策定中ですが、こちらではレベル1の対象外だった動的Webコンテンツに関するスキルも含まれる予定で、範囲はより広く、難易度も高まります(注:レベル1の出題構成については図2を参照)。
図2 HTML5プロフェッショナル認定試験 レベル1の出題構成
―認定資格者数について目標はありますか。
成井:3年間で5,000人がさしあたっての目標です。新興国におけるオフショア開発が進む中、従来の人月単価による人海戦術的なアプリケーション開発から脱却しないと、日本のITビジネスは空洞化してしまいます。クリエイティブによる価値創造にITビジネスを移行していくためには、少なくともそれくらいのペースでHTML5プロフェッショナルとしての実力を備えた認定取得者を増やしていかなければなりません。単なる認定試験制度の運営という枠を超え、日本のITビジネスの発展に貢献すること。それがLPI-Japanの思いであり活動目標なのです。