[DXを成功に導く[デジタルガバナンス]戦略と実践]

デジタル時代に価値を生む「組織・人材」像─ビジネスアーキテクトの重要性:第2回

2025年2月17日(月)西村 健一(EYストラテジー・アンド・コンサルティング ディレクター)

情報処理推進機構(IPA)の「DX動向2024」レポートによると、約6割の企業が全社戦略を背景にデジタルトランスフォーメーション(DX)への取り組みを進めているが、十分な成果を出せている企業はまだ多くない。理由は、人材不足という壁に直面しているからだ。特に、ビジネスアーキテクトのようなキーロールの不足がDXの進行を著しく遅らせてている一因となっている。DXを推進しうる人材の育成は一朝一夕には達成できず、外部調達するにも大きなハードルがある。本稿では、DX推進人材、特にビジネスアーキテクトの不足が招くリスクについて、組織論も踏まえて原因と対策を探ってみたい。

「DX推進人材不足」がさらに顕著に

 情報処理推進機構(IPA)が発行している「DX動向2024」によると、DX人材は量・質ともに年々不足感が増しており、2021年の調査では3割程度だった「大幅に不足している」との回答が、2023年調査では6割に達している(図1)。

図1:人材類型別に見た「最も不足している人材」(出典:情報処理推進機構「DX動向2024」)
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 このグラフが示すように、「ビジネスアーキテクト」が最も不足しているという状況だ。EY Japanは、このビジネスアーキテクトの不足がDXが進まない問題を考えるうえで重要なポイントであると見ている。情報処理推進機構(IPA)発行のデジタルスキル標準によると、ビジネスアーキテクトの定義・役割は以下のとおりとなる。

ビジネスアーキテクトの定義
 DXの取り組みにおいて、ビジネスや業務の変革を通じて実現したいこと(=目的)を設定したうえで、関係者をコーディネートし関係者間の協働関係の構築をリードしながら、目的実現に向けたプロセスの一貫した推進を通じて、目的を実現する人材。

ビジネスアーキテクトの役割
●デジタルを活用したビジネスを設計し、一貫した取り組みの推進を通じて、設計したビジネスの実現に責任を持つ
●関係者をコーディネートし、関係者間の協働関係の構築をリードする

 つまり、ビジネスアーキテクトには、業務理解やデジタルの知見以上に、高い目的意識や調整力などのソフトスキルが求められている。筆者の経験では、多くの企業でビジネスとITを結ぶ人材の不足と育成の難しさが以前から課題となっていた。最近、ここが特に問題視されているのは、DXの本質である業務改革や価値創造を目指すうえで、ビジネスアーキテクトへの需要が増し、その不足がDXの推進に致命的な障害となっているからだ。

●Next:DX推進を阻害するさまざまなリスク

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