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次代の企業ITに不可欠なHTML5 その“実力”を認定する資格の狙いと価値

2014年3月3日(月)

Webアプリケーションのリッチインタフェース化が進む昨今、次世代の標準プラットフォームとして注目されているのがHTML5である。HTML5の台頭によって、企業ITはどのように変わるのか。また、Webアプリケーション開発にあたるITエンジニアやWebデザイナーには、今後どんな能力やスキルが求められるのか―。「HTML5プロフェッショナル認定試験」を展開するLPI-Japanの2人のキーマンが、次代をリードする人材像を解き明かした(聞き手はIT Leades編集長・川上潤司 文中敬称略)。

HTML5 Professional

クライアント重視のコンピューティングスタイルへ

―現在のエンタープライズ領域におけるシステム開発のあり方を見ていると、“フロントエンド重視”にシフトしているような気がします。

NECソフト株式会社 執行役員
Linux Professional Institute Japan
(LPI-Japan)理事
鈴木 敦夫 氏

鈴木:モバイルを含めたエンドポイントがコモディティ化していく中で、確かにそういう傾向があるようです。加えて言えば、Webで扱うデータが画像や動画、音声など、ますます多様化しています。それらの素材をどのように生かし、システムに組み込んでいくのかが、企業戦略上で非常に重要なテーマになってきています。

―IT部門は、顧客や従業員などのエンドユーザーに対して、より優れたエクスペリエンス(経験、使い勝手の良さ)を提供することが以前にも増して求められるようになりました。こうした状況に、積極的な“攻め”の姿勢を持って取り組むことが、競合他社に対する先行優位性や差異化につながるということでしょうか。

鈴木:十分にそうなりうると考えています。受身的に対応するだけでなく、自らその可能性を広げていくことで、IT部門は存在意義を高め、企業はマーケットを拡大することができます。

成井:技術的な観点から少し補足すると、現在はPCにしてもスマートデバイスにしても、クライアントサイドの演算能力が格段に向上しています。例えば、従来では難しかった3Dグラフィックスなども、余裕で処理することができるようになりました。だからこそ、その能力を今後のコンピューティングスタイルにどう生かしていくかが、エンタープライズ領域において重要な課題になってくるのです。

―そうした取り組みを支える次世代の標準Webプラットフォームとして、HTML5が注目されるのですね。具体的にHTML5は、どんな点が進化したのでしょうか。

Linux Professional Institute Japan
(LPI-Japan)理事長
成井 弦 氏

成井:これまでのHTML4単体では本格的なWebアプリケーションを開発することができませんでしたが、HTML5はそれ自体がプログラミング言語になっています。HTML5で記述されたプログラムをクライアントに送り込み、実行させることができるのです。何よりも、HTML5は「ライトワンス」「マルチデバイス」「マルチユース」という特徴を持っています。すなわち、一度書いたプログラムを、PCやAndroid端末、iPadといった端末の種類を問わず、実行できます。今後、新しい仕様のデバイスが登場してきた場合でも柔軟に対応することが可能です。これはプログラム開発の生産性を高めると同時にユーザーエクスペリエンスを高める観点から、非常に大きなメリットになると考えています。

鈴木:HTML4に比べて命令体系が大幅に充実し、細かく作り込まなければならなかった複雑な処理を、コンパクトに記述できるようになりました。動画や3Dグラフィックスなどの機能もシンプルにインプリメンテーションすることができます。その意味ではHTML5は、リッチなWebアプリケーション開発のハードルを下げるプラットフォームになったと言えます。

―HTML5はWebアプリケーション開発のあり方をドラスティックに変えていく。ひいては、ソフトウェアの世界に携わっている人材そのものを変えていくための、原動力になるのかもしれませんね。

成井:おっしゃるとおりです。今までのWebアプリケーション開発者は単純にITの専門家であればよかったのですが、HTML5のようなプラットフォームが標準になってくると、デザインやビジュアルコミュニケーションといった能力が、より重要な要素になってきます。「ITとクリエイティブが融合する世界」を拓いていくことが、HTML5のコンセプトでもあると思います。

鈴木:いずれにしても単に優れたアルゴリズムを実装できればよいという世界ではなくなり、ユーザーにどれだけ大きな価値を提供できるかが問われるようになってきます。裏を返せば、その“勘所”を理解したWebアプリケーション開発者でければ、生き残れない時代が来るのではないかと感じています。

―Webアプリケーションに対する価値観の変化に最もフィットするプラットフォームが、HTML5なのですね。

鈴木:今後HTML5は、エンタープイライズシステムの開発においてもマスト(必須条件)になっていくと思うのです。ベンダーの独自技術に依存しない、オープンな仕様で作られているのがHTML5の強みです。

成井:実際、SAPの最新のERPシステムがHTML5に対応しました。また、オラクルがリリースを予定しているJavaの次期バージョンでもHTML5および関連技術の取り込みが進んでいます。これは彼らが、「今後のエンタープライズ向けWebアプリケーション開発でもHTML5が主流になる可能性が高い」と判断しているからです。

 
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