Microsoft Azure Intelligent Systems Service(ISS)──。「デバイスとサービスの会社」を標榜するマイクロソフトは、クラウドサービスのMicrosoft AzureをベースにIoT(Internet of Things:モノのインターネット)の需要開拓に本腰を入れて取り組む。
マイクロソフトもIoT(Internet of Things)に本腰──。
マイクロソフトの日本法人は6月16日、「The Internet of Your Things」と題したIoTのコンセプト、および「Microsoft Azure Intelligent Systems Service(ISS)」と呼ぶ、Azure上のIoTソフトウェア基盤のプロトタイプの記者向け説明会を開催した。
IoTにあえて「Your」の文字を入れたのは、IoTが産業や社会インフラのことではなく個々の企業自身の課題であること、既存の設備・IT資産を活用することがIoTのカギであることなどを訴える目的があるという。確かにIoTというと今なお、どこか他人事のイメージがある。企業が自らの課題と捉えることは、その意味で重要かもしれない。
肝心のソリューションであるISSは、WindowsやLinux搭載のデバイスをAzureと接続するための開発機能、Azure上のデータ管理機能、Azure上のアプリケーション開発機能などから成る、言わばIoT専用のPaaSである(図1)。例えば大量のデバイスを一元管理するツールや、データを収集・蓄積・分析するためのSQL ServerやHD Insight(Hadoop)といったデータベースが備わっている。
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説明会では、ISSを先行して利用しているロンドン地下鉄の取り組み事例を紹介した。150年の歴史を持つ同地下鉄は、列車やバスの運行はもとより、各ホームやエスカレータのなどの状況をビデオカメラやセンサーを使ってモニタリングし、トラブルや故障を未然に防ぐ試みに取り組んでいる。デモでは路線を示した地図を見ながらアラートが出ているエスカレータを表示。係員に適切な指示を出すアプリケーションを見せた。
リリース時期については、「ISSは現在、限定的な提供であり、近日中にパブリックなプレビューを予定している。その次に正式版というスケジュールだが、時期は言えない」(加治佐俊一・マイクロソフトディベロップメント社長兼日本マイクロソフトCTO)。関係者によると7月にパブリック・プレビュー、年内あるいは年度内に正式リリースされる可能性が高い。
「それにしてもオフィスソフトやサーバーソフトのイメージが強いマイクロソフトがIoT?どこまでできるのか」という印象があるかもしれない。しかし、これからIoTに取り組む企業にとって、マイクロソフトのISSはかなり魅力的な存在になる可能性もある。
(1)Azureをを使うことでバックエンドシステムのサイジングや大規模な初期投資が不要になる、(2)4月に組み込み用途向けのWindowsのライセンスを無料化した、(3)日本ではWindows系のエンジニアやISVが多い(図2)──オープンソース系の技術を採用して自ら取り組むのに比べ、相対的に敷居が低くなるのである。Azureの利用料金がAWSへの対抗上、安く抑えられている面もある。「デバイスからクラウドまでマイクロソフトが提供するため、企業はIoTのアプリケーション開発に専念できる」(加治佐CTO)。
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実際、説明会ではSBクリエイティブが書店向けのデジタルサイネージシステム、ComZeitが住環境/介護施設をセンサーを駆使して見守るソリューション、オムロンが製造現場の機械管理・監視ソリューションをデモしており、意欲的にユーザーを開拓している様子が伺えた(図3)。とはいえ、もちろん本格展開はこれから。IoTを巡るベンダー各社の主導権争いが本格化しそうだ。
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