[調査・レポート]

音声通信サービス、ユーザー企業の着目点は品質制御とコスト削減効果―IDCの国内通信サービス利用調査

2014年6月27日(金)IT Leaders編集部

IT市場調査会社のIDC Japanは2014年6月26日、国内企業の通信サービス利用に関する調査結果を発表した。調査結果から、音声通信サービスがモバイル化やIP化に加えてクラウド化も進展していることや、品質制御とTCO削減率の明確化が市場競争の焦点となっていることなどの動向がうかがえる。

 国内企業の通信サービス利用に関する調査は、国内企業ユーザーの通信サービス利用動向を把握することを目的に、IDC Japanが毎年実施している調査である。中心となる対象分野は、固定音声通信サービス、企業WAN(Wide Area Network)サービス、モバイル通信サービス、固定ブロードバンドサービス、IoT(Internet of Things)/M2M(Machine to Machine)分野などだ。

 今回の調査の結果から浮かび上がった特徴的な動向として、IDCは、音声通信サービスがモバイル化やIP化に加えてクラウド化も進展していることや、品質制御とTCO削減率の明確化が市場競争の焦点となっていることなどを挙げている。

 同調査によると、固定音声通信サービスでは、回線交換式サービスがIP系音声サービスの利用率を上回る一方、企業の内線サービスについては自営型のIP-PBXが従来型のアナログPBXの利用率を上回る結果となっている。IDCでは、大企業の積極的な移行が内線サービスのIP化の動きを牽引していると見ている。

 WANサービスのうち統合型ネットワークサービスについて、事業者の選定において最も重視する項目を尋ねた設問では、「ネットワーク利用のトータルコストでの優位性」と答えた企業が最多となった。「各通信事業者は、クラウドやセキュリティサービスなどとのセット価格で回線を割安に提供しており、こうした価格競争は益々激しくなると想定される」(IDC)

図1:統合型ネットワークサービスの将来的な導入意向 ※単一回答、現在統合型ネットワークサービスを利用していない企業に質問(出典:IDC Japan, 6/2014)

 モバイル通信サービスの利用動向については、企業ユーザーが支払う月額料金について尋ねている。IDCによれば、スマートフォンのARPU(Average Revenue Per User)は全般的にフィーチャーフォンより高額な傾向にあるが、今回の調査ではスマートフォン1台あたりの月額料が2,000円未満という回答も一部あったという。このことから、キャリアから回線を借り受けて格安にサービスを提供するMVNO(Mobile Virtual Network Operator)の影響が強まっていることがうかがえるとしている。「MVNOとキャリアの接続料が下落している昨今の事情を鑑みると、今後もスマートフォンのARPUは継続的に下落し、それに伴ってスマートフォンの企業への浸透率は益々高まると考えられる」(同社)

 固定ブロードバンドサービスについては、FTTHをインターネット接続目的で利用する企業のうち、過去5年間に利用する事業者を変更した企業に対して、その変更理由を尋ねている。その設問への回答で多かったのが「価格競争力」「モバイルとの親和性」「クラウドとの親和性」で、通信サービスと付帯サービスをバンドルさせて割引を提供する、通信事業者のFMC(Fixed and Mobile Convergence)戦略が影響しているとIDCでは見ている。

 IDC Japan コミュニケーションズ リサーチアナリストの鳥巣悠太氏は、「音声通信サービスはモバイル化とIP化に加えてクラウド化も競争軸になり、統合型ネットワークサービスのターゲットはSMBへシフトする。またブロードバンドサービスはWi-Fi普及を機にFMC競争がさらに加速する」と指摘。そのうえで、「音声のIP化/クラウド化競争は品質制御とTCO(総所有コスト)削減率の明確化が焦点になり、法人WANサービス市場ではSMB営業力強化が肝要になる。加えて、固定ブロードバンドの付加価値向上と利益率合理化が重要になる」とコメントしている。

 今回の調査は、IDCのレポート「2014年 国内通信サービス市場 企業ユーザーデマンド調査」(J14020103)で詳細が報告されている。

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