[インタビュー]

「アジャイルで最も意識改革を迫られるのはプログラマー」米Pivotal LabのCTO

2014年10月30日(木)志度 昌宏(DIGITAL X編集長)

アジャイル/DevOps(開発と運用の融合)のキーワードで、ビジネスの変革をうながすためのアプリケーション開発の重要性が指摘されている。それを支えるためのプラットフォームとなるPaaS(Platform as a Service)の整備も進んできた。アジャイル/DevOpsやPaaSが今後のシステム開発にどう影響するのかについて、旧Xtream Labsの共同創設者であり、現在はPaaS用ソフトウェアを開発する米Pivotalが持つPivotal LabsのCTO(Chief Technology Officer)を務めるサンディーブ・マドラ氏に聞いた。(聞き手は志度昌宏:IT Leaders編集部)

Pivotal LabsのCTO(Chief Technology Officer)を務めるサンディーブ・マドラ氏Pivotal LabsのCTO(Chief Technology Officer)を務めるサンディーブ・マドラ氏

−−クラウドコンピューティングの登場は、アジャイル開発にどのような影響を与えているか。

 クラウド以後、大きな変化が起こっている。1つは生産性のさらなる向上だ。クラウドが持つ機能やサービスを使いながらアプリケーションを開発できる。これはアプリケーション開発者にとって大きな変化である。

 もう1つは、サービスを提供するという概念の浸透である。例えば、ビッグデータを扱う基盤としてHadoopを導入しようとする際、IT部門を介して従来のプロセスで調達しようとすれば数カ月かかるところが、クラウドだと、ものの数分で利用できる。これは、運用担当者にとって大きな変化をもたらしている。

 いずれも、米Googleや米Facebookといった企業が提供するサービスを体験した結果、同じようなサービス提供の仕組みを実現したいという期待の表れだ。だからこそ、上記2つの変化を組み合わせたDevOps(開発と運用の融合)といった動きが加速しているのだ。

 当社が、CloudFoundryをベースに提供するPaaS(Platform as a Service)基盤「Pivotal CF」においても、Hadoopサービスや、モバイルアプリケーションを開発するためのバックエンドサービスなど、開発者のためのサービス強化に注力している。

開発速度だけでなく品質面でもアジャイルが優位に

 アジャイル開発は元々、常に変化できるといった柔軟性を求める取り組みだ。クラウドによって、アジャイルの能力はさらに高まっている。クラウドを使った開発チームと、クラウドを使っていない開発チームの生産性は明らかに前者のほうが高い。そこには、開発速度だけでなく、システムの停止時間が短いとか、アプリケーションを継続的にバージョンアップしても影響が出ないといったことも含まれる。

 アプリケーションの修正は、何も顧客ニーズの変化だけで起こる訳ではない。モバイルアプリケーションを考えてみてほしい。例えば、米Appleのモバイル用OSの最新版「iOS 8」は新しいAPI(Application Programming Interface)を4000も備えている。これに追従することがビジネスに直結する。種類もバージョンも短期間に変わるモバイル用OSに合わせ、新たなアイデアをアプリケーションという形にするには、アジャイル/DevOpsなしには不可能だ。

 そこでは、いかにより良い成果/製品を作り出せるかが重要だ。スピードよりも要件を満たしていることと高品質であることが勝る。すなわち、顧客が求めるのにどれだけ合致しているかが最も重要だ。合致していない部分を短期間に修正し、顧客ニーズに合わせるためにアジャイル/DevOpsを適用するわけだ。

−−企業のIT部門からはアジャイル/DevOpsへの取り組みは難しいとの声も聞こえる。

 主要企業は既にアジャイル/DevOpsへの取り組みを始めている。現在は、ソフトウェアの視点から見れば非常に興味深い時期にある。ソフトの価値が高まっていることに気づいた企業の中には、オフショア開発主体から自社開発に舵を切り直したところもある。

 アジャイル/DevOpsで先行するのは、やはりソフトウェアそのものがビジネスになる、いわゆるITサービス企業だ。タクシーやリムジンの配車サービスを提供する米Uber(ウーバー)などの新興企業もあれば、ソーシャル系サービスの巨大企業もある。Pivotal Labsの顧客には、こうした巨大企業も含まれる。

 既存業界で積極的なのは、金融業界だ。彼らは、Facebookや米Amazonといった大手ITサービス企業が金融ビジネスを破壊するのではないかと恐れている。そのため対抗策となるITサービスを自ら創り出したいためである。

−−ソーシャル系サービスを提供する巨大企業は、クラウドの構築・運用を含め、テクノロジー的にはIT業界の牽引者的役割を果たし始めている。彼らがPivotal Labsを訪れる理由は何か。

 大きく2つある。1つは、アジャイル開発のプロセスを知りたい、理解を深めたいということだ。具体的にはペアプログラミングや開発中のテストなどの実施方法である。

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