[市場動向]

オープンデータをイノベーションの起爆剤に
住民と行政の取り組みに企業が貢献できること

日本で3回目となるオープンデータデイ2015を2月に開催

2014年12月12日(金)柏崎 吉一(エクリュ 代表社員)

成長戦略の柱の一つとして日本政府も注目する「オープンデータ」。啓蒙活動を展開するオープン・ナレッジ・ファウンデーション・ジャパンが近況を報告すると共に、2015年2月に開催する「オープンデータデイ2015」について説明する会見を開いた。草の根的な取り組みも活発化しているオープンデータの最新トピックをレポートする。

新たなエコシステムを創出するチャレンジ

 こうした取り組みを後押しする企業も増えている。

 横浜市では、前回のインターナショナル オープンデータデイ 2014 と合わせて、Yokohama International Open Data Day 2014 を開催した。オープンデータを活用して横浜市内の美術館や観光情報などの見どころを検索できる「ヨコハマ アート スポット」と呼ばれるサイトの拡充をはじめ、子育て、防災、観光などをテーマにしたアイデアソンやハッカソンが行われた。1会場あたりの参加者数では国内最大・世界最大級の約180人が参加した。

横浜市政策局担当理事の長谷川孝氏

 「幅広い年齢層の姿が見られた。社会の課題を解決するアイデア出しでは、ゲーム企画の視点を加えるなど参加者に興味を持ってもらう工夫をした。大手企業もスポンサーなどとして多数協力してくれた」と横浜市政策局担当理事の長谷川孝氏は振り返る。長谷川氏は今後、こうした活動を盛り上げる上で、企業側のサポートが重要だと述べる。「行政と産業界の橋渡しはまだこれから。コーディネーター役を担う存在があるとスムーズだろう。また企業が保有している情報をオープンデータ化し、行政側のオープンデータと組み合わせることで高い付加価値が生まれる可能性もありそうだ」(長谷川氏)。

 行政や市民の意識が変わるのには時を要する。企業も短期的な利潤追求だけではない枠組みで参加することが求められている。CSRなど事業の継続・成長につながる中長期的な観点から参画する姿勢が大切だ。

 「企業はあくまで、そこに暮らす市民と連携することが重要だ」と述べたのは、千葉県流山市の近藤美保氏。街の魅力を向上、再発見する様々なイベントや交流会を運営するかたわら、「Code for NAGAREYAMA IOD 2014 実行委員会」の実行委員長を務めた。

千葉県流山市在住で「Code for NAGAREYAMA IOD 2014 実行委員会」の実行委員長を務めた近藤美保氏

 もともとITエンジニアだった近藤氏は育児休暇を機に自分の暮らす地域の課題に目を向けるようになったという。「子育てに携わる前は、地域の課題は行政にいえばなんとかしてくれる、と思い込んでいた。しかし、責任を押し付け合えば近隣の人間関係がギスギスして、余計暮らしにくくなるだけ。地域の課題は、当事者が自ら腰を上げないと解決しない」と述べる。「ただ、事前に市から色々な情報が出ていればもっと容易に解決できたことがたくさんあると思う。そんな中でオープンデータに興味を持ち、インターナショナル オープンデータデイへの参加を決めた」。

 流山市は近年、子育て世代などの流入で人口が増えている自治体の一つだ。「子連れでなかなか自由な時間が取れない家族が参加できる“子連れOK”のイベントも開催している。世代を超えたつながりを作りたい」(近藤氏)。市とコミュニティの連携も時間をかけて育んだと振り返る。

 なお、日本で3回目となるインターナショナル オープンデータデイ 2015(2015年2月21日に開催)は、前回を超える国内100会場での開催を目指している。記事公開時点で参加を表明している団体は21に達している。

 各地で生まれるコミュニティの萌芽をさらに継続、発展させていくにはどうするか、という命題は地方の活性化、ひいては日本全体の活力向上と切り離せないテーマだ。ユニバーサルを前提とする行政サービスにおいても、企業がビジネスで培ってきた見識や経験が生かせる場面は多々あるだろう。「オープンデータは、イノベーションを起こす可能性がある。言い換えると、何が起こるかわからない、ということへの期待と不安の両面があるのはわかる」(庄司氏)。だからこそ、これまでの延長線上にない、グローバルとローカルの両方の視点を持った、新たなエコシステムを創る知恵と勇気が企業にも求められている。

インターナショナル オープンデータデイ
http://odhd14.okfn.jp/


関連キーワード

オープンデータ / 行政 / 自治体 / OKF / OKFJ

関連記事

トピックス

[Sponsored]

オープンデータをイノベーションの起爆剤に 住民と行政の取り組みに企業が貢献できること [ 3/3 ] 成長戦略の柱の一つとして日本政府も注目する「オープンデータ」。啓蒙活動を展開するオープン・ナレッジ・ファウンデーション・ジャパンが近況を報告すると共に、2015年2月に開催する「オープンデータデイ2015」について説明する会見を開いた。草の根的な取り組みも活発化しているオープンデータの最新トピックをレポートする。

PAGE TOP