日本IBMは2015年1月15日、メインフレームの新機種「IBM z13」を発表した。新機種は、モバイルの比重が高まった今日の業務トランザクションの高速化や、高いセキュリティ保護レベルを維持しての大量のデータ分析などにフォーカスした設計がなされている。
スマートフォンやタブレットなどのモバイルデバイスが本格的に普及し始めている。2015年までに、1日40兆ものモバイル関連のトランザクションが発生するという予測もなされているほどだ。5年ぶりとなる新メインフレームz13は、このような背景の中で企業の新しいシステムニーズにこたえるかたちで開発が進められたという。
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z13は、1日で25億もの膨大なトランザクションを処理することができる。暗号化やスコアリングのセキュリティ機構をリアルタイムで適用することで、処理中のトランザクションデータを安全に保護するとともに、処理時間の短縮や確実な不正検知を実現する。
昨今の企業の高度なビジネス分析ニーズに即した特徴として、日本IBMは、z13を基盤に、同社の予測分析モデリング技術や統計解析アプリケーションの「SPSS」を活用することで高度な顧客行動分析などが可能になる点をアピールする。
また、ビッグデータ活用で中心となる大量の非構造化データ分析について、z13でもオープンソースの分散処理フレームワークであるHadoopへの対応がなされた。その他の分析機能としては、「DB2 BLU for Linux」によるクエリー処理アクセラレーション、「IBM DB2 Analytics Accelerator(DB2AA)」の機能強化、数学的分析処理性能の大幅な向上などが挙げられている。
ハードウェアプラットフォームとしての性能ももちろん強化された。z13は、最大141コア(111,556MIPS、1コアあたり1,695MIPS)のCPU処理能力を備え、最大10TBの大容量メモリーを搭載した1台のz13で、最大8000の仮想サーバーを同時稼働することができる。これは、前モデルの「IBM zEnterprise EC12(zEC12)」と比べて、MIPSで40%、CP性能で13%、zIIP性能で38%、IFL性能で32%それぞれ向上している。IBMは、コアあたりで50以上の仮想サーバーを稼働させることで、電力、設備やソフトウェアの運用にかかるコストの削減を図ることが可能としている。また、暗号化処理性能もzEC12の約2倍となっている。
米IBMの社内テストの結果によると、z13上に構築された「z Systemsクラウド」は、x86サーバー上で構築されたクラウドと比較して、3年間で32%、またパブリッククラウドとの比較においては3年間で60%の総所有コスト(TCO)を削減できるようになるという。
z13と同時に発表された新しいz/OSソフトウェアは、z13のインメモリー分析処理能力を拡張し、高度なモバイルトランザクション分析を提供する。これらの機構は、ユーザー企業がメインフレーム上の大規模業務アプリケーションをモバイルユーザー向けに展開することを支援するためのものだ。
このほか、z13は、Linuxはもちろん、注目が高まりOpenStack環境にも対応し、オープン技術標準のサポートというIBMメインフレームの特徴を継承している。なお同社によれば、今後、サーバー仮想化ハイパーバイザーとしてKVMをして採用する予定だという。