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初期投資も運用費もゼロでクラウド事業が可能に、米Egeneraが米EquinixとIaaSの“卸売り”を開始

2015年4月15日(水)IT Leaders編集部

クラウドの利用が本格化すればするほど、IT機器の販売会社や運用サービス会社、そして企業のシステム子会社などが、何らかの影響を受けるのは間違いないだろう。サーバーやストレージを納入したり管理したりする仕事がインターネットの向こう側に行ってしまうからだ。そんな状況にどう対応するべきなのだろうか?

 「初期投資ゼロ、運用費も不要でクラウドサービス事業者になれます」−−。怪しい勧誘にも聞こえるが、事実ならIT機器の販売会社やシステムの運用管理サービス事業者、そして情報システム子会社にとっては朗報かも知れない。クラウドファーストへの流れの中で、顧客または親会社が、自社製品とは無関係のクラウドサービスを利用し始めれば、売り上げはもとより、顧客との関係も薄まりかねない。自らがクラウドを提供できれば、少なくとも、その問題は解消できるだろうからだ。

図1:Xterity Cloud Servicesのサービスメニューの例図1:Xterity Cloud Servicesのサービスメニューの例
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 こんな需要を見込み、ハードウェアレベルの仮想化ツールを提供してきた米Egenera(イージェネラ)が4月、IaaS(Infrastructure as a Service)の卸売りサービス「Xterity Cloud Services」を開始すると発表した。主にIT機器の販売会社や運用サービス会社、情報システム会社(以下、中間事業者と呼ぶ)が対象である(図1)。一般のユーザー企業から見た利用価値もありそうなので、どんなものかを紹介しよう。

 まず仕組みから。Egeneraは今回、世界各国でデータセンター(DC)事業を展開する米Equinixと提携した。EquinixがDCに持つ物理的なITリソースをEgeneraのクラウド管理ソフトウェア群「Egenera Cloud Suite」を介して、中間事業者が利用できるようにする。DCの運営などはEqinixが担うので、中間事業者はクラウドサービスを運営するための人的リソースを持つ必要がない。

 Egenera Cloud Suiteは「PAN Cloud Director」「PAN Manager」「PAN Domain Manager」といったEgenera製ソフトウェアで構成される。PAN Managerが、ブレードサーバーのCPUやメモリー、ネットワーク、ストレージを物理レベルで仮想化。これらと、仮想化ソフトのVMware/Hyper-V、およびAWS(Amazon Web Services)のEC2をPAN Cloud Directorがコントロールし、リソースを調達(プロビジョン)する。

 この仕組みにより、ニーズに合わせて物理ブレードサーバーや仮想サーバー、EC2のサーバーからリソースを調達して、必要なサーバーを構成。カタログ化して利用できるようになる。仮想サーバーモデルのほかに、DRaaS(ディザスタリカバリー)、DaaS(デスクトップ仮想化)などのカタログもあらかじめ用意されている。当然、利用状況を監視したり、課金したりする機能を備える。

図2:Xterity Cloud Servicesにおけるサービスの流れ図2:Xterity Cloud Servicesにおけるサービスの流れ
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 ITリソースを提供するEquinixは、世界15カ国に100以上のデータセンターを持つ。うち5カ所は日本にある。AWSやGO GRIDなど主なIaaS事業者ともネットワークで接続している。例えば、Equinixのリソースをプライベートクラウドにし、AWSなどのパブリッククラウドと組み合わせたハイブリッドクラウド構成を取ることもできる(図2)。

 ここまでできるなら、一般企業に直接サービスを提供すればいいのではと思えてくる。だが、Egenera自身はソフトウェアベンダーであり、大手事業者に互してクラウドを提供するだけの機能も人材も抱えていない。そこでIT機器の販売会社や運用サービス事業者、日本では情報システム子会社などに着目したわけだ。

 ではこうした中間事業者にとって、Xterityを利用するメリットは何か?Egeneraによると、(1)自社ブランドで事業展開できる、(2)ITリソースをカタログ化するなど提供メニューや価格設定も自由にできる、(3)不具合などトラブルの管理や稼働管理などのサポートの仕組みがある、といったところだ。

 中間事業者が自社ブランドのクラウドを展開できるように、IT資源や構成ツール、管理ツールなどを、文字通り”卸売り”するのだから当然だろう。

 Egeneraは、Xterityが中間事業者の生き残り策になると見ている。同社CEOであるPete Manca氏は、ブログで次のように述べている。

 「中間事業者の多くは大手のパブリッククラウドを再販しても、ほとんどマージンを得られないことに疲れている。一部には自らデータセンターを使ってクラウドを構築しようとしているが、やはり得られるものは少ない。これに対しXterityは使いやすく、(自社ブランドなので)売りやすい。中間事業者にとっては新たな道になる」

 クラウドの競争力につながる料金はどうか。非公開だが、中間事業者の利益を上乗せするため、AWSや米MicrosoftのAzure、米IBMのSoftLayerなどを直接使う場合に比べれば高くなるのは当然だろう。Egeneraは価格メリットよりも、99.99%の稼働率保証(多くのIaaSは99.95%)、世界各地にあるDCの利用によるネットワーク遅延の少なさなどXterityの品質を強調。そのうえで、ユーザー企業に、より近い中間事業者がサポートすることが差異化点になるとしている。

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