ほとんど勝機がない入札案件のために香港に飛んだ日本ITCソリューション課長の佐々木。翌日から,どう動くかをホテルの一室で考えながら、山下塾の木元塾頭から聞いた「真のグローバルリーダーの条件」や「日本の精神」に改めて思いを巡らせていた。自分は、塾頭の教え通り、日本人のアイデンティティを持って商談に望めるだろうか。そんな気持ちながらも、日本にいる妻に電話を掛けた。
「ごめん。遅くなって」
日本は午前1時を回ったところだ。ここ香港とは時差が1時間ある。
「いいのよ。でも心配していたわ。無事着いたのか不安でした」
「いや、明日の会議の準備があって遅くなってしまった。これからもう寝るところだ。また明日電話するよ。じゃあ、おやすみ」
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