オンラインストレージサービス大手の米Dropboxが、複数人での情報共有に向けたサービス拡張を続けている。米Microsoftなどとも協業し、企業の利用ニーズにも対応する。個人向けクラウドサービスは“シャドーIT”と呼ばれ、ITガバナンスを脅かす存在とも見られている。なぜ企業向けサービスの強化なのか。米本社で製品に関する責任者を務めるIlya Fushman(イリヤ・フッシュマン)氏に、海外における企業での利用状況やビジネス向けサービスのこれからなどを聞いた。(聞き手は志度昌宏=IT Leaders編集部)
−−Dropboxに限らず、PCやスマートフォンでの利用を対象にしたオンラインストレージサービスの多くは個人向けのイメージが強い。
確かに、Dropboxのユーザー数は全世界で3億人を数え、多くの個人が利用している。だが利用者は個人に限らない。400万の企業が業務にも利用している。さらに当社は、1年半前の2013年から、企業向けサービス「ビジネス向けDropbox(英文サービス名はDropbox for Business)」を提供している。ビジネス向けDropboxの利用企業数は10万社を数える。日本でもサントリーなどが利用している。
−−個人向けサービスは“シャドーIT”とも呼ばれ、企業利用は懸念材料だった。企業はどんな用途でオンラインストレージサービスを利用しているのか。
企業ニーズの第1は、モバイル環境からのデータアクセスだ。スマートフォンやタブレット端末などの普及で、企業においても、これらデバイスの活用は優先課題になっているはずだ。
もう1つのニーズは、企業間のコラボレーションの強化である。Dropboxでは、1社当たり平均7社と情報共有を図っている。
個人向けサービスでは、1つのファイルを複数のデバイスからアクセスしても編集過程などが保持されるファイル同期の仕組みが強調される。企業では、この仕組みを使いクラウド上にあるフォルダーをシェアすることで、社内外のパートナーと情報を共有するわけだ。
企業の活動場所は、グローバル化が進む中で分散化・多拠点化が進んでいる。結果、各地でのパートナー企業を含めた連携を強化しなければならない。例えば、女性向け高級アパレルメーカーの米BCBG MAX AZRIAグループでいえば、衣料のデザインから製造、マーチャンダイジングはもとより、商品紹介用の写真撮影や紹介文の作成までをグローバルに手がけている。これらの活動をブランドイメージを保ちつつローカルに展開するためには社内外の関係者の間での情報共有は不可欠だ。
こうした企業ニーズに応えるための機能強化を図っている。2015年3月に正式リリースした「バッジ」機能や、ファイルの所在をURLで展開する機能などだ。バッジ機能では、共有しているファイルを他の誰かがアクセスしたり変更したりしていることが一目で分かるようにした。後者は、URLを伝えることでワークフローの構築が可能になる。
−−情報共有の仕組みは、これまでもグループウェアなどを使い企業は構築してきた。なぜ、オンラインストレージサービスなのか。
ここまでの説明と重複するが、モバイル環境を前提に社内外の関係者と、できるだけ制限なく情報共有を図りたいからだ。
企業が構築してきたグループウェアなどと比べると、Dropboxには大きく3つの利点がある。1つは、そのパフォーマンス。クラウド環境でデータの同期を図ることに焦点を絞って技術開発されている。同様のオンラインストレージサービスと比較してもDropboxは20%高速だと自負している。
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