米シマンテック(Symantec)が、2015年1月時点では分社化するとしていたベリタステクノロジーズ(Veritas Technologies)を投資会社のカーライルグループに売却すると発表した。売却は、分社後の上場予定時期だった2016年1月までに完了させる。分社/売却についてシマンテックはセキュリティ事業に注力するためと説明するが、新生Veritasはどう動くのか。今後のシナリオなどをアジア太平洋および日本地域担当営業責任者のクリス・リン氏に聞いた。(聞き手は志度 昌宏=IT Leaders編集部)
──サイバー攻撃が巧妙になり、データのセキュリティ確保が重要になってきている。今こそSymantecとVeritasの相乗効果が生きる時期ではないのか。
クリス・リン氏:買収当初は、そうした相乗効果を狙っていたし、データセキュリティの重要性が高まっていることも認識している。だが買収から10年を経て我々は、顧客に対しより良いサービスを提供するために分社を決めた。
その背景には、ビッグデータなどの流れの中で、顧客ニーズは多様化し、セキュリティの担当者とIM(Information Management)の担当者が明確に分かれてきたことがある。それぞれに対応する技術的にアプローチも異なってきた。顧客が求めるセキュリティ領域の拡大や、ネットワーク上に広がっていくデータへの対応などを考えると、1社で双方に対応するのは難しい。
確かに、ビッグデータの台頭で、データがビジネスや意思決定に重要だという認識は定着してきた。だが同時に、データ容量の急増や、データの保管場所がフラッシュストレージや、ネットワーク経由のクラウドなどに広がり管理が複雑になるという課題も大きくなっている。
新生Veritasは、経営に不可欠になったデータにまつわる製品/サービスに徹していく。そこでのセキュリティについては、セキュリティベンダーとの協業で対応する。
──主力のバックアップやDR(Disaster Recovery:災害対策)といったデータ管理機能は、ストレージ製品のSoftware Defined化に伴い、標準機能に取り込まれたり新興ベンダーから新たな仕組みが提案されたりしている。
Veritasはソフトウェアベンダーであり、マルチベンダー環境でのストレージ管理は10年も前から手がけている。SDS(Software Defined Storage)でいえば当社が発祥だ。IAサーバーとSSD(Solid State Drive)を組み合わせてストレージを構成するためのソフトウェア製品も投入済みだ。
しかし、新生Veritasとしては、データ管理にとどまらず、Information(情報)の管理に焦点を当てていく。顧客が求めているのは、データそのものではなく、ビジネスニーズを満たすための意味のある情報だからだ。
具体的には、「Information Availability」と「Information Insight」の2領域に分けて展開する。前者には「Information Orchestration Architecture」を、後者には「Information Fabric Architecture」をそれぞれ確立し、これらに沿って製品を拡充していく。既に5四半期(15カ月)分の製品投入計画も立てている。
Information Availabilityは、必要なときに必要なデータを利用できるようにする製品群だ。上述したようにデータの保存場所は多様化しており情報システムのバックエンドは複雑になっている。個別対応でない、プラットフォームとしてのデータ管理を実現する。例えば、2015年7月に発売した「Veritas InfoScale」がその代表例になる。仮想化環境を含め、各種アプリケーションの可用性とストレージの統一的な管理機能を提供する。
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