地方銀行がICTを活用して地域経済の活性化を図る−−。ありそうでなかった取り組みを、ふくおかフィナンシャルグループ(FFG)が実施する。FFGの事業基盤である九州から、決済サービスやシェアリングエコノミーにおけるイノベーションを生み出す狙いだ。
少子高齢化と一極集中が進む中、地方創生は政府が力を入れるテーマ。だが、各地域の有力企業や地方銀行にすれば、地域経済の活性化は政府以上に重要なテーマのはずだ。では、そのために何をすればいいか、あるいは何ができるだろうか?そのヒントになりそうなのが、北九州に拠点を置く、ふくおかフィナンシャルグループ(FFG)が企画・実施するICTを活用したビジネスのコンテストである。
コンテストの名称は「X-Tech Innovation 2015」。(1)日常の消費を簡単・便利にする新しい決済サービス、(2)様々な「シェア」により日常生活をより便利にするサービス、の2つをテーマに掲げ、新しい技術やサービスを募集する(告知サイト)。
「なぜ、この2つのテーマなのか?」という疑問が浮かぶ。世界的に見れば、(1)ではSquareやPaypalが、(2)ではUber TechnologyやAirbnbといった成功例がすでにサービスを展開しているからだ。とはいえ、これらの米国企業がすべての領域をカバーするわけではない。特に地域密着を考えた時、「決済」も「シェア」も、まだまだ未成熟で開拓の余地があると考えた模様だ。
コンテストの賞金は、最優秀賞が100万円、優秀賞が50万円。ほかに特別賞や協賛企業賞を設けている。ただし、例えば米Intelが実施するIoT(Internet of Things:モノのインターネット)関連のコンテストの賞金100万ドル(1億2000万円)に比べると賞金額は小さい。むしろ「ビジネスパートナーとのマッチング機会の提供など事業化を支援する」のが、X-Tech Innovation 2015の魅力と言えるだろう。
実際、主催者であるFFG以外に、九州電力や、西部ガス、総合メディカル、第一交通産業、TOTO、安川電機など、九州拠点の有力企業がゲストパートナーとして顔をそろえている。テレビ西日本や西日本新聞などマスメディアも同様だ。応募する側にとっては、大きなメリットになり得る。
応募者の居住地は問わないが、「九州に根ざした企業のビジネスの加速や、地域の生活者・企業にとって有益なサービスを生み出す意欲がある法人・団体・個人(個人の場合は満20歳以上)」としており、まずは九州での事業化を求めている。
2015年9月1日から募集を開始し、10月25日までに提案を受け付ける。その後、書類による1次選考、面談による2次選考を経て、12月22日にコンテスト形式でプレゼンテーションをする最終選考会を開催し、受賞者を決定する。
ちなみにコンテスト名の「X-Tech」は、最近の流行語の1つである「Fin-Tech(金融テクノロジー)」や「Ed-Tech(教育テクノロジー)」に範をとったもの。ICTで既存の産業やビジネスのあり方を変革するといった意味が込められている。テーマが限定される、九州での事業化が前例など制約に思えることも含まれるが、これらの制約が逆に発想を刺激する面があるのかも知れない。