IDC Japanは2015年10月26日、2015年~2019年の国内OpenStackエコシステムの市場予測を発表した。同市場は2015年に前年比2.5倍の20億4,500万円を見込み、2014年~2019年の年間平均成長率は114%で、2019年には363億円に達すると予測している。
オープンソースソフトウェア(OSS)のクラウド基盤構築/管理ソフトウェア(クラウドオーケストレータ)であるOpenStackへの注目が高まっている。近年、ITベンダーがこぞって自社製品でOpenStackをサポートするようになり、多くの製品がAPIを通じて連携可能になり、“事実上の標準”に近づきつつある。
IDC Japanによると、国内IT市場ではOpenStackを中心としたエコシステムが急速に拡大している状況にあるという。「OpenStackは今後クラウド基盤のみにとどまらず、次世代ITインフラのアーキテクチャであるSoftware-Defined Infrastructureの中核を成すソフトウェアになる」と同社では見ている。
今回、IDCが実施した国内OpenStackエコシステムの市場規模調査の対象となったのは、企業・組織がOpenStackを使用してクラウド基盤を構築するために投資するハードウェア(サーバー、ストレージ、ネットワーク機器など)、ソフトウェア(OpenStackディストリビューション、OS、仮想化ソフトウェアなど)、プロフェッショナルサービス(コンサルティング、システム構築/開発など)で、その売上げ額の合算で算出している。
調査の結果、2014年の国内エコシステム市場規模は推定8億1500万円で、2015年では2014年の約2.5倍となる20億4,500万円に達することが見込まれている。IDCによると、「2014年から2015年にかけて、大手のコンテンツサービスプロバイダーやSNSプロバイダー、パブリッククラウドサービスプロバイダーを中心に採用実績が増加している。また、導入の可否を判断するための検証を行う企業も増加している」(同社)という。
IDCは、2016年の国内OpenStackエコシステム市場を61億5000万円、2019年には363億4,000万円にまで伸びると予測している。また、2014年~2019年の年間平均成長率(CAGR:Compound Annual Growth Rate)は113.7%としている。同社は、「短期的にはサービスプロバイダーにおけるOpenStackの採用が市場成長を牽引するが、中期的には大手一般企業のプライベートクラウド基盤における採用など企業向けの実績も増加していく」と今後の市場を予測する。
調査結果を受けて、IDC Japan ソフトウェア&セキュリティ リサーチマネージャーの入谷光浩氏は、「OpenStackはまだ発展途上にあり、今のところ導入するためには高度な技術とエンジニアを必要とする場合が多い。一方、国内における先進的な導入事例はOpenStackエンジニアの育成を促し、エコシステムの活性化をもたらしている」と分析する。同氏は、今後、OpenStackの成熟化が進み、エンジニアの裾野も拡大していくことで、一般企業への導入が増加していくと見ており、「ITサプライヤーはOpenStack成長期における市場機会の獲得を確実なものとするために、いち早くOpenStackの実績を積みノウハウを取得することが重要である」と提言している。
今回の発表内容は、IDCが発行したレポート「2015年 国内Software-Defined Infrastructureエコシステム市場動向分析」(J15561001)で詳細が報告されている。