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[市場動向]

バージョン管理サービスGitHubが狙う本当の日本市場

2015年12月24日(木)杉田 悟(IT Leaders編集部)

今や、オープンソースソフトウェア(OSS)を一切使っていない企業システムは存在しないといわれている。かつてクローズドなソフトの筆頭と目されていた米Microsofや米Appleでさえも、近年多くのソフトを公開しOSSへの傾倒ぶりを印象付けている。そのOSSを公開するWebサービスとして、MicrosoftやAppleも含む世界中の開発者たちから支持されているのが、「GitHub(ギットハブ)」だ。しかし、GitHubが使われているのは、オープンソースコミュニティだけではない。実はこのGitHub、クローズドな企業システムの開発にも多く利用されているのだという。

 GitHubを語る上で欠かせないのが、バージョン管理システム「Git(ギット)」の存在だ。Gitは、LinuxOSの開発プロジェクト用に開発された分散型のバージョン管理システム。バージョン管理とは、ソフトウェアに加えられた変更を記録していくことで、これを使うことで変更前の特定のバージョンを呼び出すことができる。

 分散型のバージョン管理システムは、コミュニティ参加者がそれぞれのクライアントにリポジトリ(保管場所)を持つため、障害などが起こっても履歴が失われることはなく、プロジェクトを継続できるというメリットがある。それが多くの技術者たちに支持され、世界中のオープンソースプロジェクトで利用されるようになった。

 そのGitをベースに、ソフトウェア開発プロジェクトを管理するための様々な機能を搭載した環境をWebサービスとして提供するのがGitHubだ。GitHubにはソフト開発をスムーズに進めるための機能が多く搭載されているが、特徴的なのが、SNSとして利用できることだ。コメント機能が付いており、開発者同士のコミュニケーションを取ることができる。

 また、GitHubの代表的な機能として「Pull Request(プルリクエスト)」がある。分散型開発を進められるGitHubでは、開発者がそれぞれにリポジトリをローカルに保管できる。プルリクエストは、開発者がローカルリポジトリで加えた変更を他の開発者に通知する機能だ。プルリクエストは一覧で確認できるため、レビュー担当者とコメントしながらブラッシュアップしていく作業が可能となる。

GitHubのCofounderであるScott Chacon氏

 GitHubは、主にオープンソースプロジェクトに利用されており、現在は約1200万人の開発者が利用し、リポジトリの数は3000万に及ぶという。様々なものがOSS化され、GoogleやFacebookなど大手ITベンダーの貢献がOSSに勢いを与えてきた感がある。しかしGitHubの共同設立者であるScott Chacon氏は、「近年、OSSが更に活気付いてきた要因として上げられるのが、MicrosoftとAppleのOSSへの貢献だ」と指摘している。

 MicrosoftとAppleといえば、Linuxの対抗軸にあった有料OSの2大ベンダーだ。OSSとは最も遠い存在と見られてきた2社だが、実は両社ともGitHubでソフトウェアプロジェクトを公開しており、「オープンソースへの傾倒が急速に進んでいる」という。

 Microsoftは、Linuxの最大のライバルであるWindowsで世界中のPCを制覇した商用OSの巨人だが、Windows 10の無料アップグレードを開始するなど、ビジネスモデルも含めた大胆な変革に臨んでいる。その一環として進められているのが、Microsoft Azureや.NET、Visual Studioなどに関連した機能、サービスのOSS化だ。.NETのcoreや、マルチOSの編集機能であるVisual Studio Codeなどの重要プロダクトもOSS化され、GitHubに上げられている。Chacon氏が、「Microsoftは、ここ数年で1企業としては最高レベルの貢献をオープンソースコミュニティに対して行っている」と指摘するほどだ。

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