香港での大型案件で、日本ITCソリューションが競合する北京鳳凰には、安値攻勢を仕掛けてくるとの情報があった。真意を探ろうと、ITCソリューションの佐々木課長ら4人は、北京鳳凰のトップである蘇総経理との面談に臨んだ。アメリカ経験が豊富な蘇総経理に、米中の政治経済の話から始めたところ、蘇総経理が「日本企業は中国に積極的でない」と反応した。佐々木は、グローバルビジネスにおいて日本企業が抱える課題を蘇総経理に相談するかのごとく話しかけた。
ITCソリューションの佐々木課長は、これまで考えてきた日本企業の課題を次々と挙げていた。
「日本の国内市場は人口減少と共に縮小していくので、海外でも現地の日系企業だけを顧客しているようでは将来、大きくはなれないでしょう。ところが、弊社の上海支社で使われている言語は日本語です。それでは日本人以外の人たちとの共同経営はできません。
中国企業や中国に進出した欧米企業と日本企業がビジネスをするのであれば、今までの上海支社とは別の支社を立ち上げなければ無理だと思うのです。ところが、英語を公用語にした支社を立ち上げようとすれば今度は、そこに派遣できる日本人がほとんどいなくなります。
もちろん、日本にも英語が話せる人は大勢います。ですが、グローバルリーダーとして育成されていないのです。つまり、新たなビジネスモデルを海外市場でも開発したり、それを展開したりできる日本の人材がいないということです。加えて、そうしたグローバルリーダーとしての英語が使えるトップがいないため、日本企業はどうすれば良いのかすら分からないのが実情でしょう。
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