AI(Artificial Intelligence:人工知能)への関心が、これまでにも増して高まっている。これまでに紹介した運輸分野の自動運転や、製造分野のIndustrial Internet(インダストリアル・インターネット)やIndustrie4.0(インダストリー4.0)によってAIの活用が急速に進むことが予測されるからだ。今回は、AIを使う観点から、米Googleと米IBMの両社の動きを参考にAIの進化を考えてみたい。
AI(Artificial Intelligence:人工知能)に対し、ITに関わっていない一般の人々までが大きな関心を抱かせたイベントの1つが、世界トップレベルの囲碁棋士を破った米Google DeepMindの「AlphaGo」だろう。囲碁は、チェスや将棋より盤のマス目が多く、次の一手を予測したり有利な手を評価したりが難しいため、AIがヒトに勝つのはまだまだ先と考えられていた。それが2016年3月、プロ棋士であるイ・セドル9段との5回戦を戦い4勝1敗で勝利した。
AlphaGoは、ディープラーニング(深層学習)によって過去の打ち手データを学習。従来の探索手法に、分析結果から発見した次の一手を高精度で予測する方法を組み合わせて勝ちパターンを判断するという新しいアルゴリズムを創り出した。さらにAlphaGo同士を3000万回対戦させることによって、そのアルゴリズムの予測精度をさらに高める「強化学習」により囲碁の実力を高めている。
このベースになっているのは、DeepMindが開発した「Deep Q Network」と呼ぶアルゴリズムだ。2014年、スペースインベーダーやピンポンなどのビデオゲームにおいて、やり方を学習するだけで自らが判断基準を見つけ出し、人間以上の腕前になれることを証明している。
「ゲームに勝つ」というゴールに対し、ゲームのやり方やルールを教え、そこからはAI自身が学習して評価基準を改善していく方法は、確実に進展し精度を増している。その中で、「囲碁でトップレベル棋士に勝つ」という困難で複雑な課題に対し、囲碁のプロではないエンジニアが作ったAIがゴールに到達したことは、AIの進化を示す大きなマイルストーンになったといえる。
AIへの重点投資のビジネス化を公表したGoogle
AlphaGoの勝利から2カ月後の5月18日、GoogleはAI に重点投資してきた対象の成果を3つ発表した。1つは、AIを応用してスマートなリプライ(応答)を実現する対話型アプリケーション「Allo」。人の言葉を認識し、チャットをしているときでも、店の検索などを音声で問い合わせれば、それを調べて表示する。2つ目は「Google Home」と呼ぶ家庭内に置く端末だ。声による検索要求の結果などを音声で返す。レストランの予約やチケットの購入、音楽再生、家電の操作などもできるという。
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