米GEが推し進める「Industrial Internet」の成果の1つが日本に本格進出してくる。ものづくりと、IoT(Internet of Things:モノのインターネット)やAI(人工知能)などのテクノロジーを融合させた、火力発電プラント「デジタル・パワープラント」の建設事業だ。今回はIndustrial Internetの進捗を例にデジタル化について考えてみたい。
米GEが2017年2月、火力発電の建設事業で日本に本格進出すると発表した。東洋エンジニアリングと組み、全国の電力大手や新規参入の発電会社からの受注を目指すという。この火力発電プラントは「デジタル・パワープラント」と呼ばれ、GEがガスタービンや飛行機のエンジンなどの大型機械の開発に使用している「Digital Twin(デジタルの双子)」の考え方を適用したものである。
デジタルモデルから新しい発電プラントを建設
Digital Twinとは、機器の開発において、機器自身と専用の試験設備とに大量のセンサーを導入し、それらから得られるデータを基に作成したデジタルモデルである。部品それぞれと機器全体をデジタル上でモデリングし、解析やシミュレーションによってトライアルを行い、そこに実際のテストによる検証を組み合わせることで、機器や素材の性能向上や開発期間の短縮、全体最適の実現を目指す。
この考えを火力発電所プラントに応用したのがデジタル・パワープラントだ。デジタルモデルを参考に新しい発電プラントを建設することで、よりクリーンで信頼性の高い電力を供給できるプラントの設計を可能にする。実際、蒸気技術とデジタル技術に基づき、1万以上のセンサーから上がってくるデータから発電性能を改善し、効率を最大1.5%高め、計画外のダウンタイムを5%削減し、CO2排出量を3%削減するという。
Digital Twinは稼働したプラントの運用にも役立てられる。センサーからリアルタイムに上がってくるデータによってプラントの状況がDigital Twin上に反映される。それによって効果的な監視・管理が実現でき、ダウンタイムの削減や設備寿命延長につながる。急な電力供給の要求があった時も、シミュレーションによる最適解に基づいて制御すれば、燃料消費を最小化しながら効率的でクリーンな発電が実現できる。特に、パワーグリッドのようなダイナミックに電力を供給する仕組みでは、稼働状況のモニタリングをベースに適切なアクションを取ることが燃料消費の削減にとって非常に重要になる。
Digital Twin上でITとOTが融合
センサーや解析技術、AIの進歩によってDigital Twinという、より精緻なデジタルモデルが確立できれば、ITとOT(Operational Technology)の融合が可能になり、開発期間の短縮や、効果的な監視によるダウンタイム削減や設備寿命の延長化、燃料や材料消費の最適化が実現できる(図1)。つまり、これまでの部分最適化や熟練ノウハウによる最適化から、IoTやAIの活用を使った製造プロセスや発電プロセスの全体最適化や、デジタルによる開発・運用の最適化への変革である。

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米Googleの囲碁ソフトウェア「AlphaGO」が、強化学習によって強さを増してきているように、Digital Twinが精緻であればあるほど、モデルを使ったシミュレーションや解析によって、実際の環境を使った試験やトライアルに比べ、はるかに迅速に、かつ柔軟に多くのケースを検証でき、機器や設備自身の性能や品質向上に貢献する。
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