[ユーザー事例]

ローソンやガリバーが“デジタル企業”宣言、創造的破壊(Disruption)に動く日本企業

2016年8月5日(金)田口 潤(IT Leaders編集部)

SAPジャパンが2016年7月末に開催したカンファレンス「SAP Forum」。基調講演は、限られた時間に複数のユーザー企業が登壇するスタイルのため、大きな期待は持たずに参加したが、案に反して実に示唆に富む内容だった。登壇したローソンやガリバーといった企業が今、考えていることを、それぞれの発言内容から紹介する。

 「デジタル革命のスピードは極めて速い。今までのように、要件をベンダーに伝えてシステム調達していたのでは間に合わない。内製化してデジタル変革を推進する」「既存事業の否定を厭わず事業創造に挑む。欠かせないのがデジタル化に向けた人材の強化だ。社名も、ガリバーインターナショナルからIDOM(挑む)に変更した」−−。

 これらはSAPジャパンが2016年7月末に開催したカンファレンス「SAP Forum」の基調講演における発言だ。前者は、コンビニ大手ローソンの執行役員である白石 卓也 氏、後者はIDOMの執行役員新規事業開発室長である北島 昇 氏によるものだ。それぞれ講演時間は10分少々と短かったが、内容は危機感と示唆に富んでいた。基調講演には、もう1社、白山工業というベンチャー企業も登壇した。各社がどんなことを考えているのか、発言内容を紹介しよう。

基幹システムがボトルネック:ローソン

 ローソンは今、SPA(Specialty Store Retailer of Private Label Apparel:製造小売り)を宣言しており、白石氏の発言は、その延長線上にある。「生産性の改革を最大の狙いとして、システムを全面的に見直す試みを推進する。ローソンが展開する1万2000店のバックには物流や工場、原材料のメーカーがある。そこでSPAとしてどうあるべきか、サプライチェーンを見直す」という。

 ポイントになるのが見える化と、型作り、テクノロジー革新の3つだ(図1)。「今さら『見える化』と思われるかも知れないが、買わずに帰ったお客や店の前を通ったけど来店しなかったお客、ATMを使っただけのお客など、見えていないことは実に多い。ITを駆使すれば、それらを変えられる。ただし、そのためには業務プロセスの標準が必要で、これが型作りだ」(白石氏)。

図1:ローソンはデジタル技術で生産性の改革を急ぐ図1:ローソンはデジタル技術で生産性の改革を急ぐ
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 それらのベースになるのがテクノロジー革新、つまりITである。「システムベンダーからの提案には正解は含まれにくい。やはり我々自身が知見をため、方向性を出さなければならない」。だからこその内製化であり、そのためにローソンは2016年1月、ローソンデジタルイノベーション(LDI)という専門子会社を設置した(社長は白石氏が兼務)」。

 しかし何でもかんでも内製するわけではない。「外部とも手を組みパートナーシップ、オープンイノベーションを進める。テクノロジーに強い人材を集めるのは、そのためだ。逆に、他社から選ばれる企業になるということでもある」とする。実践は必ずしも容易ではないはずだが、現実的なアプローチでもある。

 最後に白石氏は、こうまとめた。「AI(Artificial Intelligence:人工知能)やIoT(Internet of Things:モノのインターネット)が喧伝されているが、社内では紙の稟議回覧が普通に回り、データ更新も1日1回のバッチ処理で行われている。基幹システムがボトルネックになっているので再構築する計画だ」。これはローソンに限らない。というより日本企業の現実だろう。

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