2016年8月の3本:MicrosoftがWindows 10を大幅に機能強化/IBMとWorkdayがクラウド事業で提携/国内のランサムウェア被害が前年比7倍に急増
2016年9月6日(火)松岡 功(ジャーナリスト)
2016年8月のニュースから松岡功が選んだのは、「米MicrosoftがWindows 10を大幅に機能強化」「米IBMと米Workdayがクラウド事業で戦略的提携」「国内のランサムウェア被害が前年比7倍に急増」の3本である。
米MicrosoftがWindows 10を大幅に機能強化
米Microsoftが2016年8月2日(米国時間)、Windows 10の大型アップデート「Windows 10 Anniversary Update」の提供を開始した。それに伴い、日本マイクロソフトが8月5日に記者説明会を開き、強化した機能などについて説明した。
今回の機能強化では、とりわけ企業での導入促進を図るため、データを暗号化して情報漏漏えいを防ぐ機能や、「侵入を完全に防ぐことは不可能」との見地に立った標的型攻撃への対応策となる機能が追加された。これらによりWindows 10は、「デバイスによる保護」「マルウェア対策」「IDの保護」「データの保護」「侵入検知&対応」の5つの領域でのセキュティ機能を持ったことになる(図1)。
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日本マイクロソフトによるとWindows 10は、2015年7月の提供開始から1年を経て全世界で3億5000万台以上のPCをはじめとしたデバイスで利用されている。大手企業では、87%が導入に向けた検証作業を進めているという。同社の業務執行役員Windows&デバイス本部長である三上 智子 氏は、「提供から2年目に入った今後は、多くの企業に検証段階から本格導入に移行していただけるよう支援したい」と語った。
[選択理由]
多くの企業がクライアントPCのOSにおいて、Windowsの旧バージョンからWindows 10へ移行すべきか、あるいはどのタイミングで移行に踏み切るかに頭を悩ませているからだ。企業にとっては様々な観点からの導入検証が必要であり、移行にかかる予算も確保しなければならない。既存PCがWindows 10の動作条件をクリアしていなければ、ハードウェアも入れ替える必要があり、当然費用はかさむことになる。
米調査会社のNet ApplicationsがWebトラフィックを集計してまとめた「NetMarketShare」レポートによると、2016年7月時点におけるPCのOSシェアは、Windows 7が47.01%を占め、Windows 10はそれに続く21.13%である(図2)。Windows 10の普及率は2割強というのが現状だ。この数字は企業向けも個人向けも合わせたものなので、企業向けだけに絞れば、まだ1桁台の普及率ではないかと推察される。
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そうした状況で今後、果たしてWindows 10への移行はスムーズに進むのか。振り返ってみると、現時点でおよそ半数のシェアを占めるWindows 7も、企業での導入が本格化したのは投入から1年以上経過してからだった。Windows 7のサポート終了が2020年1月に予定されているため、2019年が更新需要のピークになるとの見方もある。
ただWindows 10において注目すべきは、今回の機能強化に見る通り、セキュリティ機能が向上していること。企業にとってセキュリティ脅威への対応は待ったなしだ。従って、できるだけ早く本格導入に踏み切るべきだというのが筆者の見解である。
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