「Chasm(キャズム)」は、ジェフリー・A・ムーア氏が1991年に著書「キャズム(Crossing the Chasm)」で提唱したハイテク市場向けのマーケティング理論。IT業界のメインストリームで活躍する複数の企業がキャズムを取り入れ成功したことで知られる。そのムーア氏が名誉会長を務めるChasm Institute LLC(キャズム・インスティテュート合同)は、企業がChasmを導入するための教育およびコンサルタントを行っている。今回、キャズム・インスティテュートで、実際にユーザー企業に赴きキャズム導入の支援を行っているマネージングディレクターのマイケル・エックハート氏が来日、話を聞くことができた。
エックハート氏の話の前に、キャズムについて説明しておく。キャズムは前述の通り、マーケティング・コンサルタントのジェフリー・A・ムーア氏が1991年に著した「Crossing the Chasm」で、ハイテク市場向けのマーケティング理論として登場したものだ。Chasmとは、英語で「隔たり」「地表の裂け目」「深い溝」を意味する。ハイテク分野の新しい製品やサービスがローンチ後、成長期に差し掛かる直前に立ちはだかる深い溝を「キャズム」と呼んでいる。
Chasm Instituteがキャズムの説明によく使っているのがTMM(The Tech Market Model)の図(図1)。Early Marletの次に来るのがキャズムで、それを超えるとBowling Alley、Tornado、軌道にのるとThriving(盛況)Market、Maturing(成熟)Market、Decling(減退)Marketという道をたどるということが示されている。TMMはテクノロジートレンドを対象としており、特定の企業や製品を対象としていない。例えば、キャズムの対象は「iPhone」ではなく「スマートフォン」、「iPad」ではなく「タブレット」というように。
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―Chasm Instituteはm企業のマーケティング戦略を考えているのか、それとも企業変革を考えているのか。
マーケティングは、われわれの仕事の一要素にすぎない。大きくは、ユーザーが新しい製品を市場に出していく、それによって変革していくことの手伝いをしている。IoT、ビッグデータなど新しいテクノロジーエリアにおいて、クライアントが市場参入するうえで勝利するための戦略、戦っていくべきエリアの特定などを行っている。大手企業であれば、現状を変革するような新しいテクノロジーを扱っている企業のエグゼクティブやプロダクトチームが直接の顧客となる。一般に「Marketing」というと、広告戦略的な取り組みを意味するが、Chasm Instituteが提供しているのは「Go to Market」のストラテジーだ。
―Go to Marketのストラテジーとは、経営陣のするべき仕事そのものではないのか。戦略立案を自分たちで考えずに、アウトソースするということになるのか。
エグゼクティブの仕事を肩代わりするのではない。Chasm Instituteは、ツールやメソッドを使ってユーザーがGo to Marketを体系的に実現する手伝いをしている。シリコンバレーやボストン、シンガポールのユーザー企業のエグゼクティブはエンジニア出身者が多いので、テクノロジーに対する理解や洞察が深い。その一方で、市場におけるリクワイアメントに関しては、十分に把握できていない人が多い。
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