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[イベントレポート]

イノベーションを生み出すには、デジタルとアナログ双方での環境づくりが重要

パネルディスカッションレポート【IT Leaders Forum 競争戦略としてのワークスタイル革新】

2016年12月28日(水)森 英幸(IT Leaders編集部)

2016年11月29日、インプレスは「IT Leaders Forum 競争戦略としてのワークスタイル革新」セミナーを都内で開催した。当日は、ユーザー事例のほか、Sansan、ワークスモバイルジャパン、Box Japanの最新ソリューションを詳説するセッションが設けられた。本稿では、パネルディスカッションの様子から、イノベーションと働き方改革の関係について迫ってみたい。

デジタルの利便性を越えて実感するアナログの価値

 長谷川氏によると、リクルートではコミュニケーションを促進するための施策として、キックオフイベントや表彰制度などを行っている。

 キックオフイベントはチームごとに定期的に行われるもので、会社の方針ではなく、チームリーダーが自らの抱負を自分の言葉でメンバーに伝える。先述したリクルートの企業文化の3つの柱を実現するために、「お前はどうしたい?」と呼びかけあうことになっているなかで、チームリーダーが率先して「自分はこうしたい!」と表明することで活発な議論を生み出そうというわけだ。また、表彰制度では、表彰される人が、自分の置かれた状況、試行錯誤の内容などを自分の言葉で発表する。「本人のコミュニケーション能力の向上にもなるし、自分を知ってもらうことで他の社員から相談されるきっかけにもなる」(長谷川氏)。

 このほか、チーム内の信頼関係を作るため、特にテーマを決めずに話し合いを行う「よもやま」と呼ばれる週1回のミーティングがある。さらに、2016年2月からは会社が部費を提供し、部活動への参加を奨励しており、組織間の交流を深めるうえで効果的だという。

 これらのリクルートの施策を聞いた井手氏は、「コミュニケーションを促進する施策の中に、ITツールが登場しないのはなぜか。コミュニケーション手段の向き不向きがあるからなのか」と問いかける。

 長谷川氏はこれに、「ITツールの導入で情報伝達、共有のスピードは格段にアップしたが、ITツールを導入して改めて実感したのは、オフラインのコミュニケーションの重要性だ」と答えた。

 「例えば、先ほど『お前はどうしたい?』という言葉を紹介したが、これは字面だけで見ると詰問調のきつい言葉にも見える。前後の文脈や雰囲気が伝わる場でないと、誤解をされかねない。個人的には、信頼関係の育成では、目の動きやジェスチャーなどの非言語情報が重要な意味を持っていて、そこが今のITツールには足りないのではないかと感じている」(長谷川氏)。

 リアルなコミュニケーションの重要性については、津谷氏も深く同意する。

 「グーグルのオフィスと言うと、カラフルで奇抜な印象があるかもしれないが、そこにはさまざまな出社したくなる仕掛けが散りばめられている。わざわざ出社しなくても仕事はできるが、ビデオ会議だけでは伝わらないものもある。会社に行けば、カフェで他の社員とゆっくり会話ができる。チャットで相談していて、『ちょっと直接会って話そうか』というときに使えるフリースペースが要所要所に用意されている。どれも、緊密でカジュアルなコミュニケーションが取れるようにするためだ」(津谷氏)。

 また、最近はフリーアドレスのオフィスが増えているが、グーグルは固定席を採用している。自分の居場所と思える空間を提供することで、会社を仕事のしやすい場所と思わせるための一つの手法だという。

 長谷川氏と津谷氏の話で共通するのは、ワークスタイル改革を成功させるには、ITツールの活用だけでは不十分であり、デジタルとアナログを両輪として施策を実施する必要があるということだ。まずは、何のためにワークスタイル改革に取り組むのか、経営トップから社員までの各層で認識を共有するところがスタート地点となるだろう。

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