ブロックチェーンが仮想通貨のための技術としてスタートしたことから、金融分野のための技術だと理解されている方が多いようです。しかし、ブロックチェーンは,仮想通貨のためだけの技術ではありません。今回はブロックチェーンの技術が私たちの生活をどのように変えていくかについて考えてみたいと思います。
第1回で説明したように、ブロックチェーン技術の根幹は暗号技術です。すなわち、デジタル上のデータあるいは情報が真であることを低コストで証明できるという点に特徴があります。
法定通貨の場合、紙幣が偽札かどうかは目視で判定しますし、振込の場合は金融機関からの振込であることで、それを裏付けています。これに対し仮想通貨はデジタル上の通貨のため、振り込まれた金額が偽物ではないか、所有者は本当に送金者なのかという点を証明する必要があります。ここに活用されているのがブロックチェーンの技術です。ブロックチェーン技術の特徴を再掲しておきましょう。
(1)中央管理ではなく複数分散管理のため、情報改ざんが困難である(過半数の管理者の情報を一度に改ざんする必要がある)
(2)原則として「履歴が長い情報」が優先されるため、過去の情報も改ざんしなければ情報が修正されない
日々の生活は情報が「正しい」ことを常に求めている
これらの特徴からデジタル上のデータであっても情報改ざんが困難であり信用性が担保されます。実は、これらの特徴から、例えば契約締結や所有権移転登記などにおいてもブロックチェーン技術が活用できると注目されているのです。
これまで、重要な契約については公証人役場で公正証書を締結する、あるいは確定日付を押印してもらう。不動産や車両などの重要資産については法務局で移転登記を行い、謄本における名義人を真たる名義人としてきました。いずれも、契約書が複数作成され二重売買などが行われてしまうと真の所有者が誰かが分からなくなってしまうために取られた手法です。ですが、こした取引も、ブロックチェーン技術を使ってデジタルデータにおいても情報の正確性が担保されれば、すべてをデジタルで完結できることになります。
ブロックチェーン技術により「鍵が不要になる」とも言われています。予め音声や指紋、虹彩など登録したり、携帯などの個人用デバイスから所有者が本人であることを証明したりできれば、扉の解錠などでも鍵が不要になります。日本では現在、訪日観光客が増え、民泊の需要が確実に高まっています。民泊などの場合は特に鍵の受渡しコストを以下に下げられるかが課題の1つになっています。ブロックチェーン技術により、この点が解決できれば民泊などの新しいサービスの普及拡大にもつながります。
公共施設や電力など社会インフラのデジタル化を加速
一部の自治体やゼネコンは、橋や道路、建物といった公共施設の老朽化の確認手段としてブロックチェーン技術の活用も検討をしています。各社は今、老朽化の状態を把握するためにIoT(Internet of Things:モノのインターネット)の導入を進めています。しかしIoTの最大のボトルネックは情報管理とハッキング対策です。仮に集まった情報が不正に改ざんされてしまえば、老朽化していても老朽化していないと報告されるなど大変な問題になりかねません。デジタル情報は、その収集だけでなく管理および正当性の証明が何よりも重要です。ここにブロックチェーン技術を活用しようというわけです。
ブロックチェーン技術によって発電・送電のあり方も変わると言われています。最近は家庭用太陽光発電も徐々にですが普及してきており、家庭やオフィスでも「売電している」という方が多く存在しています。一方で電力需要家も、電力完全自由化の流れを受けてクリーンな電力または地域で発電された電力を購入したいという需要も存在しています。
会員登録(無料)が必要です
- ブロックチェーンに対峙するIT部門は、まず何をすべきか【第5回】(2017/03/28)
- 海外にみるブロックチェーン技術の活用事例【第4回】(2017/02/28)
- ブロックチェーン2.0=金融機関における活用【第2回】(2016/12/20)
- ビットコインを生んだブロックチェーンとは【第1回】(2016/11/22)