これまで、ブロックチェーンの仕組みや考え方について考察してきました。今回は海外では実際に、どのようにブロックチェーン技術を活用しようとしているかを紹介していきます。
日本ではFinTechの文脈で語られることが多いブロックチェーンですが、前回までに説明してきたように、ブロックチェーンの適用範囲は金融分野に限りません。ではブロックチェーンへの取り組みで先行している海外では、どんな適用を考えているのでしょうか。金融分野の取り組みを含め、いくつかを紹介しましょう。
決済手段としてのブロックチェーン
ブロックチェーン技術の活用方法として最も分かりやすい例が決済手段として利用です。これはBitcoinなど仮想通貨を支える技術としてのブロックチェーンを考えれば当然でしょう。日本ではBitcoinなど仮想通貨が利用できる店舗はまだまだ少ないですが、米国を中心に海外ではBitcoinでの決済が既に普及しています。Bitcoinで直接決済ができる店舗もあれば、デビットカードや他のアプリケーションと連動してBitcoin決済ができるようになっています。前者ではスターバックスが、後者ではAmazon.comが、それぞれ相当します。今後は日本でも、Bitcoin決済の利用シーンは一気に増えるのではないでしょうか。
株式取引システムとしてのブロックチェーン
Bitcoinを使っている人の多くは「投資のため」が現状ですが、米国の株式市場NASDAQでは、株の取引システムにブロックチェーン技術を活用しようという動きが始まっています。2015年にリリースされた「NASDAQ Linq」という未公開株式取引システムが、それです(図1)。対象企業の従業員などが報酬として与えられた自社株を売買するための市場として運営されています。こうした場での実証実験を踏まえて今後、一般の株取引についてもブロックチェーン技術が活用される可能性があります。
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土地の登記謄本としてのブロックチェーン
土地の登記情報などを管理・監査する手法としてもブロックチェーン技術が活用されています。例えば、「Factom」というサービスでは、情報の改ざんを防ぐためにブロックチェーン技術を使っています(動画1)。土地の登記変更は日本だけでなく海外でも役所で手続きをする必要があります。Factomの仕組みを使えば、土地に対する権利を分散的に記録・管理し、その所有者の変更や担保設定状況の保管などが容易になります。
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