三菱化学グループ唯一のIT企業である菱化システムは、グループ会社のアプリケーションを連携させるためのデータ連携基盤をハブ&スポーク型に刷新した。従来のP2P(Peer to Peer)型の連携では、アプリケーションの追加や変更のたびに発生する開発や保守が負担になっていたからだ。グループ内外での企業や事業の統廃合も進む中で、システム基盤をより柔軟にするのが狙いである。新しいデータ連携基盤の導入・運用を担う菱化システムの鈴木輝亮グループマネジャー(販売物流システム事業部 販売物流システム1部)と、平田俊彦グループマネジャー(管理システム事業部 管理システム1部)に、これまでの課題や導入の経緯などを聞いた。(文中敬称略)
−−DIHを使ってデータをやり取りするアプリケーションは、どのようなものですか。
鈴木:グループをまたがる受発注や工場への出荷状況といったトランザクション系データを扱うアプリケーションが中心です。工場の精算システムや、リアルタイムなデータ交換が必要なアプリケーションは、それぞれ別の仕組みが稼働しています。
平田:加えて今回から、取引先コードといったマスターデータを配布する仕組みも、DIHを利用することにしました。当社ではマスターデータは、マスターデータ管理センターで一元管理しており、それをグループ各社に配信しています。
−−データ連携の仕組みの切り替え対し、現場からの抵抗などはありませんでしたか。
鈴木:連携プログラムは、販売や物流など各アプリケーションの担当チームが開発することになっています。今回の切り替えでは、データを利用するアプリケーションの側から必要なデータをDIHに取り出しにいくことに対する抵抗はあったようです。ですが、各チームからキーパーソンを出してもらい、進捗状況などを毎週共有することで、DIHへの切り替えを進めていきました。
平田:切り替えに伴ってはDIHの利用方法を定める標準化チームも10人ほどのメンバーを中心に立ち上げています。開発標準やデータのネーミングの規則、各種権限の管理方法などを定めるためです。
DIHの利用方法の原則は「データを提供する側が、できるだけ多くデータ項目をDIHに提供する」ことです。将来的に様々な形でデータを利用する可能性を考慮した結果です。こうしておくことで、データの提供側でプログラムを修正する手間が最小限に抑えられるからです。
当初は「データは一切加工しない」という原則も定めていました。PowerCenterでは連携過程でのデータ加工を認めていたのですが、それだと用途別に複数種のファイルを作ってしまい、開発工数がかかるうえに変更時の保守性が低下してしまうからです。ただ実際に運用を始めてからは、データの受取側に合わせて一部の加工を認める形に変更しています。といっても認めているのは、データとデータを単純につなぎ合わせたり、特定の値を追加したりなどに留めています。
−−今後、このデータ連携基盤をどのように活用されたいですか。
鈴木:2015年4月にDIHを本番稼働させてから、これまでに作成した連携プログラムは約200程度です。既存の連携プログラムのすべてをDIH対応に切り替えるには、まだ1〜2年はかかる見込みです。加えて、冒頭でお話ししたようにグループ内での組織統合もあり、それに伴う新たなニーズにも対応していかなければなりません。統合対象の1社である三菱化学では基幹システムを従来のメインフレームからIA(Intel Architecture)ベースのクライアント/サーバーシステムに切り替えが終了したところでもあり、その影響もグループ全体で考慮する必要もあります。
平田:実は当社には以前から「PowerCenter User会」と呼ぶグループが存在します。名前の通りPowerCenterの活用方法を共有するために発足したのですが、今はDIHの利用メンバーを含む約35人が属しています。同会では毎月、テレビ会議システムも使いながら、データ連携のためのノウハウなどを共有しています。ここを母体にデータ連携の仕組みをさらに進化させたいですね。
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